最も明るい超新星の正体は、ブラックホールに飲み込まれた星かもしれない

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2015年に観測された、史上最も明るい超新星爆発だと思われていた現象は、高速で自転しているブラックホールに恒星が接近し飲み込まれることによって発生したものかもしれない。

【2016年12月19日 Hubble Space Telcopeヨーロッパ南天天文台

2015年6月、超新星全天自動サーベイ「All Sky Automated Survey for SuperNovae (ASAS-SN)」が、これまでで最も明るい超新星「ASASSN-15lh」を検出した。インディアン座の方向に出現したこの超新星は、それまでの記録の2倍明るく、ピーク時の明るさは天の川銀河全体が放つ光の20倍もあり、当初は超高輝度超新星と考えられた。

イスラエル・ワイツマン科学研究所のGiorgos Leloudasさんたちの研究チームは、超新星爆発が起こったと思われる約40億光年彼方の銀河を観測した。その結果からLeloudasさんたちは、この珍しい現象に関する新たな説を発表した。「10か月にわたる観測で、今回の現象は異常に明るい超新星ではないらしいという結論に至りました。観測結果が示しているのは、高速回転している超大質量ブラックホールによって低質量星が破壊されているという現象です」(Leloudasさん)。

ブラックホールに接近し崩壊する星の想像図
高速回転している超大質量ブラックホールに接近し崩壊する星の想像図(提供:NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSSNASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS)

判断の根拠となっている大きな要因は、データの様子が超高輝度超新星のものではなくブラックホールの潮汐力による崩壊に似ていること、紫外線波長で再び明るくなり温度が上昇するという変化も超新星らしくないこと、そして一般的に超高輝度超新星が見られるのは青く星形成が進んでいる矮小銀河であり、今回の観測対象のような赤く不活発な大質量銀河ではないことだ。

銀河の中心に位置する超大質量ブラックホールの質量は、少なくとも太陽の1億倍ということが示唆されている。このブラックホールに太陽のような軽い星が近づきすぎたために、星が崩壊し、ASASSN-15lhとして観測されたのだろう。同様の現象は、これまでに10回ほどしか観測されていない。

また、この質量のブラックホールでは、普通は「事象の地平線」(ブラックホールの重力から逃れられなくなる範囲)の外側で潮汐力による恒星の破壊は起こらない。この問題を解決するため、ブラックホールは高速で回転しており、事象の地平線の外側でも恒星の潮汐破壊が引き起こされたのだろうと考えられている。「ASASSN-15lhを引き起こした現象が100%潮汐崩壊とは言い切れないのですが、可能性はかなり高いと考えています」(Leloudasさん)。

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