探査機ジュノー、木星大気中の水の量を調査

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探査機「ジュノー」による観測から、木星の赤道領域の大気を構成する分子の約0.25%が水であると見積もられた。過去の探査では水が極めて少ない可能性が示唆されていたが、その量は予想以上に多様なのかもしれない。

【2020年2月25日 NASA JPL

木星大気内における水の量の正確な値は、過去数十年にわたり惑星科学分野における課題の一つとされてきた。木星は太陽系の惑星のなかで最初に形成されたと考えられており、太陽に取り込まれなかったガスや塵の大半が含まれるとみられている。木星がどのように作られたかだけでなく、木星の気象学や内部構造にも、水の量は重要な意味を持つ。しかし、大気の奥深くに存在する水の量を正確に観測することは長年困難だった。

1995年12月、探査機「ガリレオ」がミッションの最後に木星大気内へと降下していきながら、深さ約120km(気圧約22000hPa)の領域における大気中の水を計測し、その量が予想されていた値の10分の1ほどしかないことを明らかにした。また、水の量が、最も深いところで増加しているらしいこともデータから示された。非常に深いところでは大気がじゅうぶんに混ざり合っていて水の量は一定だと理論的に考えられていたことから、この増加は驚くべき結果であった。

米・カリフォルニア大学バークレー校のCheng Liさんたちの研究チームは、NASAの探査機「ジュノー」による観測データを用いて、木星の大気中の水の量を調べた。ジュノーは現在、53日周期で木星を周回しながら、様々な機器を用いて観測を行っている。そのうちの一つであるマイクロ波計測器「MWR(Microwave Radiometer)」は、6つのアンテナを使って様々な大気の深さの温度を同時に計測可能であり、その温度データから水の量を見積もることができる。

木星の赤道域
「ジュノー」のカメラJunoCamで撮影された木星の赤道域(2017年12月16日撮影)。マイクロ波計測器「MWR」は厚い白い雲を見通して大気の深いところの水を計測できる(提供:NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Kevin M. Gill)

他の領域よりも大気がよく混ざっていると考えられる赤道領域について、8回の接近探査によって得られた深さ約150km(気圧約33000hPa)の場所のデータをLiさんたちが分析したところ、木星大気を構成する分子の約0.25%が水であると見積もられた。これは太陽の(水素と酸素の量から換算される)水の量の3倍に相当し、ガリレオによる結果よりも多い。

「木星の水の存在量が非常に多様であるとは、誰も思いもしませんでした。まだわかっていないことがどれほど多いのかを思い知らされます。深いところでも大気がじゅうぶんには混ざっていないことを示したジュノーの発見は謎であり、現在その解明に取り組んでいます」(ジュノー主任研究員 Scott Boltonさん)。

今後ジュノーは木星の北半球を重点的に調べるようになる。緯度や領域によって大気中の水の量がどのように変化するのか、サイクロンが多く見られる極域のデータから木星全体の水についてどのような知見が得られるのか、興味は尽きない。次回、25回目のフライバイは4月10日の予定だ。「1回1回のフライバイが、発見をもたらす重要なイベントです。木星にはいつも新たな発見があります。ジュノーは“惑星に接近して、じかに理論の正否を確認する必要がある”という大切なことを教えてくれました」(Boltonさん)。

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