「チャンドラヤーン2号」着陸機の残骸をLROが発見

このエントリーをはてなブックマークに追加
インドの月探査機「チャンドラヤーン2号」の着陸機「ヴィクラム」の残骸が、NASAの月探査機LROが撮影した画像から発見された。

【2019年12月9日 NASA

チャンドラヤーン2号は2019年7月22日に打ち上げられ、8月20日に月周回軌道に投入された。同機は月の周回観測を行う周回機と、「ヴィクラム」と名付けられた着陸機からなる。ヴィクラムには、着陸後に月面を移動探査するローバー「プラギャン」も搭載されていた。

ヴィクラムは9月2日に周回機から分離され、9月6日には月の南極から600kmほど離れた高地の平原に着陸する予定だったが、着陸予定時刻の直前に通信が途絶した。9月10日にインド宇宙研究機関(ISRO)は、チャンドラヤーン2号の周回機によってヴィクラムの位置は確認されたと発表したが、画像などは公表されていない(参考:月探査機「チャンドラヤーン2号」の着陸機、依然通信できず)。

NASAの月周回探査機「ルナー・リコナサンス・オービター(LRO)」の搭載カメラ「LROC」を運用するチームは、ヴィクラムの着陸予定地点を9月17日に撮影し、そのモザイク画像を26日に公開した。世界中の人々がこの画像データをダウンロードし、ヴィクラムの痕跡を探した。

インド・チェンナイに住む技術者のShanmuga SubramanianさんもLROCの画像を調べた人の一人だ。Subramanianさんは着陸予定地点の過去の画像と9月17日の画像を比べて、以前にはなかった光点が写っている場所を見つけた。Subramanianさんはこの結果を10月3日にツイッターに投稿し、LROのプロジェクトチームにもメールで報告した。

ヴィクラムの衝突地点
LROが11月11日に撮影したヴィクラムの衝突地点の画像。緑色の点は機体の残骸や残骸である可能性が高い物体が写っていた場所。青色の点は月面の土壌が乱されている場所で、機体の小さな破片などが落ちた場所だと考えられる。「S」と書かれた場所が、Subramanianさんが10月に最初に発見した破片の位置(提供:NASA/Goddard/Arizona State University、以下同)

9月17日のモザイク画像では太陽光の当たる条件があまりよくなかったため、残骸を確認するのは難しかった。LROはその後、10月14、15日と11月11日にもこの地域の画像を撮影し、LROCチームは新たな画像でこの周辺を徹底的に探索して、ついにヴィクラムの衝突地点と残骸が広く散らばった領域を見つけ出した。衝突地点は月面の南緯70.8810度、東経22.7840度、標高834mの地点で、残骸はこの場所を中心に1km以上の範囲に広がっている。

Subramanianさんが最初に特定した場所は衝突地点から北西に750m離れた場所で、画像では明るいピクセルが1個写っていただけだった。11月11日の画像は1ピクセルが0.7mに相当する高い解像度で撮影でき、太陽光も72度で当たるという好条件だったため、衝突でできたクレーターや放出物が飛び散った「光条」がよく写っていて、機体の残骸によって月面の土壌が乱された場所もとらえられている。最大の残骸はおよそ2×2ピクセルのサイズで写っており、その影も1ピクセルの長さで写っていることが確認できるという。

ヴィクラムの衝突地点
ヴィクラムの衝突地点付近を衝突前に撮影した画像との比較動画。衝突後に表面がわずかに明るくなっていることがわかる。画像クリックで表示拡大

チャンドラヤーン2号の周回機は高度100kmの極軌道を周回しながら現在も順調に観測を続けていて、10月には分光観測や合成開口レーダーを使った表面の観測も始まっている。

(文:中野太郎)