月の材料はほとんどが地球由来?

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【2012年3月30日 NASA

月は一番身近な天体でありながら、まだ謎に包まれている未知の世界でもある。その材料の半分近くが原始地球に衝突した惑星からの物質と考えられてきたが、ほとんどが地球由来であることを示す研究成果が発表された。


惑星同士の衝突の想像図

惑星同士の衝突を描いた想像図。月は地球と火星サイズの惑星との衝突破片から形成したと考えられている。クリックで拡大(提供:NASA)

月の形成を説明するもっとも有力な仮説は、テイア(Theia)と呼ばれる火星サイズの天体が原始地球に衝突し、その破片から月が誕生したというもの(ジャイアント・インパクト説)だ。これまでは月を構成している破片の約40%がテイア起源だと考えられてきたが、シカゴ大学のJunjun Zhang氏らの研究によれば、月のほとんどは原始地球の破片からなっているという結果となった。

研究では、宇宙線による宇宙風化なども考慮に入れながら月のサンプルの酸素同位体(同位体:元素としては同一だが中性子の数が異なるもの)の比率を分析した。すると、地球の物質のそれとほぼ一致していることがわかった。月の材料の半分近くがテイア起源だとすれば、これはありえない結果だという。

難揮発性(気体になりにくい)物質にこのような同位体の均一性が見られるということは、月の物質が原始地球のマントルから形成されたことを意味する。その過程としては、衝突による放出、原始地球のマグマ海と原始月円盤(衝突後に地球周囲に形成された、破片の円盤)との物質のやりとり、高速自転の遠心力による地球からの分裂などが考えられる。

だが、チタンなどほかの難揮発性物質の同位体比が、酸素同様に地球と月で同じ傾向を示すかは、まだわかっていない。

衝突から残骸の円盤ができ、そこから月が生まれたことは有力な説となっているが、そのメカニズムの理解はまだまだ十分ではない。月は地球に一番近い外部天体で、既に人類の足跡も残っているが、まだ見せていない興味深い秘密をたくさん持っているようだ。