科学誌「サイエンス」が「かぐや」特集号を発行

【2009年2月16日 JAXA

月周回衛星「かぐや(SELENE)」の成果が、2月13日発行の米科学誌「サイエンス」の表紙を飾るとともに、4つの論文が掲載された。


(2月13日発行の米科学誌「サイエンス」の表紙)

2月13日発行の米科学誌「サイエンス」の表紙。クリックで拡大(提供:国立天文台)

日本の月周回衛星「かぐや(SELENE)」は、昨年10月に定常運用を完了した。「かぐや」はその後も、定常運用期間中に集めきれなかったデータを収集する目的で、観測を続けている。

その「かぐや」が、2月13日発行の米科学雑誌「サイエンス」の表紙を飾った。同誌には、「かぐや」の成果である4つの論文が掲載された。表紙に採用されたのは、「かぐや」の地形カメラがとらえた「モスクワの海」の画像である。

日本の科学衛星や探査機が表紙を飾ったのは、2005年に太陽観測衛星「ひので」が、2006年に小惑星探査機「はやぶさ」がそれぞれ特集されて以来のことである。

今回掲載された4つの論文について、その要旨を紹介しよう。


月レーダサウンダー(LRS)による月の表側の海の部分の地下構造探査に成功

(月の表側の地形図)

月の表側の地形図。(1)〜(5)が研究グループが地下の層状構造を調べた領域。クリックで拡大(提供:JAXA/国立天文台/国土地理院)

「かぐや」に搭載された月レーダサウンダー(LRS)の観測機器チームを中心とした研究グループが、「晴れの海」など月の表側の海において、地下の層状構造を観測することに成功した。

月の表側の海において、地下数百mの深さに層状構造があり、褶曲(しゅうきょく)していることが明らかとなった。褶曲とは、水平に堆積した地層が地殻変動によって波状に変形した構造のことである。また、褶曲の状況から、褶曲を起こした地殻変動は地層群自らの重さによって発生したものであるとの従来の考えを覆し、月全体の冷却が主な要因となっていることを発見した。

レーザ高度計(LALT)によって得られた月の全球形状および極域地形図

(月面地形図)

(上)「かぐや」のレーザ高度計(LALT)による月面地形図、(下)ULCN 2005による地形図。クリックで拡大(提供:JAXA/SELENE)

かぐやに搭載されたレーザ高度計(LALT)によって、分解能が0.5度以下の月全域地形図が作成された。その精度は、従来のULCN 2005(クレメンタイン探査機で撮影された画像の写真測量解析によるモデル)に比べ、2桁近く高い。

月の最高地点は、Dirichlet-Jackson盆地の南端、最低地点はAntoniadiクレーターの内部で、標高差は19.81kmになることが明らかとなった。ULCN 2005では、17.53kmとされていた。

リレー衛星「おきな」を用いた月の裏側の重力場の直接観測

(月全球の重力異常図と地形図)

「かぐや」のデータから作成された月全球の(上)重力異常図と(下)地形図。左側が裏側、右側が表側。クリックで拡大(提供:JAXA/SELENE)

リレー衛星「おきな」(※)を使い、世界で初めて月の裏側の重力場が直接観測された。その結果、月盆地の重力異常は3つのタイプに分けられることが明らかとなった。

さらに、3つのタイプの比較から、盆地が形成された40〜35億年前ころ、月の内部は表側が高温、裏側が低温だったことがわかった。

この成果により、月の表と裏では、表面の地形だけでなく内部にも違いが及んでおり、温度の違いが月の進化に大きな影響を与えたと推測されている。

※リレー衛星「おきな」は、2月12日に月面に落下し、ミッションを完了した。

地形カメラ(TC)による月の裏側のマグマ噴出活動の長期継続観測

2008年11月7日のアストロアーツニュース「『かぐや』、月の裏側を年代測定」で紹介したように、モスクワの海の一部の領域を含め、25億年前に形成された領域が複数発見された。これにより、裏側においても海を形成するような内部活動が、少なくとも25億年前まで継続していたことが明らかとなった。

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