近赤外線でせまる、木星の中赤斑と大赤斑の真の姿

【2006年8月2日 W. M. Keck Observatory

最接近で話題となったすれ違う木星の大赤斑と中赤斑を、ケックIIに搭載された近赤外線カメラNIRC2が観測し、可視光観測では決して捉えることのできない赤斑の構造にせまる画像が公開された。


(木星と衛星イオの近赤外線画像)

(左)木星と衛星イオの近赤外線画像(擬似カラー)、(右)2つの赤斑のクロ−ズアップ近赤外線画像。クリックで拡大(提供:Imke de Pater, Michael Wong(UC Berkeley); Al Conrad(Keck), And Chris Go(Cebu, Philippines))

互いにすれ違うことで中赤斑の色はどのように変化するのかと、注目されていた大赤斑点と中赤斑との最接近だが、ケックIIに搭載された近赤外線カメラNIRC2がその様子をとらえた。画像では、中赤斑がより暗くとらえられるなど、通常は雲に覆い隠されている赤斑の構造が明らかにされようとしている。

ケックIIが観測を行ったのは、大赤斑と中赤斑が可視光でほぼ同じ色となった7月20日(世界時)。中赤斑がより暗くとらえられた理由は、波長の短いフィルターを使用した観測では、雲の上空にある多くの大気のためにメタンなどの分子が近赤外線の光を吸収してしまうためである。これは、赤斑という嵐のもっとも先端の高度が、大赤斑より中赤斑の方が低いことを示すものだ。

また、5マイクロメートルのフィルターを使ってとらえられた2つの赤斑のクローズアップ画像は、雲の層の奥深い部分から放射される熱に関する情報をもたらした。雲が低い層からの熱放射をさえぎっているため、赤斑の周りにある狭い領域には雲がまったくなく、熱が外にもれている。そのため、2つの赤斑が暗く見えるのだ。また、近赤外線による観測では、可視光では不透明な雲の内部の情報も得ることができ、それにより赤斑の構造を知る手がかりが得られる。たとえば、それぞれの赤斑の南側になだらかな狭い弧が見られるが、これは、2つの赤斑の相互作用により高速の風が互いの周りに曲折した結果なのだ。

大赤斑が赤い理由については、いまだ完全に明らかになっていない。ケックIIによって得られた近赤外線画像やデータの分析とその研究成果が待たれるところである。