Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2021年8月号掲載
宇宙と過ごす夏休み

本誌の特集でも紹介したように、今年のペルセウス座流星群は8年に一度の観測好機。ぜひ“星天”の下でたくさんの流れ星を見たい!そんな願いを込めて紹介するのが、平塚市博物館の図録『火球と隕石』。著者は同館学芸員の藤井大地氏で、1年前話題になった2020年7月2日未明の大火球を撮影した人物だ。今春に開かれた特別展では、このとき落下した習志野隕石も展示された(同館2階情報コーナーで「ポスト特別展 火星と隕石」を9月8日まで開催)。図録は「第1章 火球と隕石のひみつ」「第2章 流星を観測する」「第3章 作って楽しむ火球と隕石」からなる。紙面には著者や同館会員らが撮影した写真もたくさん登場し、まさに平塚市博物館の本領発揮だ。さらに、各ページ下部の「クイズコーナー」や「ざんねんなにせもの火球」、裏表紙からめくる「火球パラパラ動画」など、楽しい仕掛けも随所にある。夏休みには第2章を参考にして、流星を観察したり撮影したりしてほしい。

この夏「魅力的な天体写真を撮影したい!」と思っている人にお勧めするのが『星景写真からはじめる星空タイムラプスへのステップアップ』。33年前に『星ナビ』の前身『スカイウオッチャー』誌が初めて提唱した「星景写真」という言葉もすっかり定着した。デジタルカメラの高感度特性により表現領域が広がり、さらにインターバル撮影機能を駆使することでタイムラプス(微速度撮影)も可能になった。この本は、世界を股にかけて活躍するナイトカメラマンが、星景写真からナイトタイムラプスムービーにたどり着くまでの技術を紹介する。単なるテクニック解説ではなく、天体と光とカメラを理解する“思考”が詰まっている。

次は、夏休みに親子で読みたい科学絵本『ねえねえはかせ、かぐや姫はどうやって月に帰ったの?』。「かぐや姫」をモチーフにして、太陽・地球・月の間で起こっている自然現象を教えてくれる。小学4年生の女の子と博士の会話が、天体間の“ダイナミックな科学”を親しみやすく導く。

『宇宙のしくみ』はサブタイトルの「知識ゼロでも楽しく読める!」の言葉どおり、天文初心者にわかりやすいイラストと図解で宇宙に関する98の疑問に答える入門書。解説は見開きで完結するので、順番に読んでもいいし、気になる疑問を目次から選んで読んでもいい。さらに答えを3択から予想する「選んで宇宙」クイズや、「空想科学特集」も面白い。

『身近にあふれる「天文・宇宙」が3時間でわかる本』も、天文と宇宙について全般的に紹介する解説書。この出版社は『身近にあふれる「○○」が3時間でわかる本』というタイトルで16書籍を発刊しているから、人気のシリーズなのだろう。著者は平塚市博物館のプラネタリウム解説員。そのためか、科学者による説明ではなく、天文や宇宙に興味があって博物館を訪ねた人(この本を手に取った人)へわかりやすく語りかけているような文章だ。著者自身の宇宙への好奇心と、天文の面白さを多くの人に知ってほしいという愛情を感じる。

『改訂版 星の王子さまの天文ノート』は2013年に発刊された同名書籍を最新情報に改訂したもの。お馴染みのサン=テグジュペリの挿絵や、物語に登場した言葉を交えながら、月・惑星・星座・天文現象などを紹介する天文初心者向けのビジュアル入門書。この本も『星の王子さま』同様に、ロングセラーとして愛されている。今年の夏休み、王子さまと星を見ながら過ごすのも良い“旅”になるだろう。

(紹介:原智子)