Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2020年9月号掲載
惑星観測の好機到来 太陽系を探る

この夏は、すべての惑星が観測好機を迎えている。例年なら夏休みに暗い夜空の下へ遠出して、星雲星団などを望遠鏡で観測したり撮影したりする人が多いと思う。しかし惑星の観測や撮影なら、近場や自宅周辺で感染症のリスクを心配せずに楽しめる。親子で明るい惑星を探す星空散歩をしたり、毎日変化する木星の衛星や本体の模様を観測したりと、自宅(近場)だからこそ惑星の魅力にたっぷり浸ることができる。

まずは、大学生・大学院生の教科書でもある「現代地球科学入門シリーズ」から『太陽・惑星系と地球』 。全16巻シリーズの第1巻でありながら最終発刊なのは、この惑星科学の分野がいかに急速に拡大しているかを示している。太陽系の起源・彗星・小惑星・月・惑星・生命存在環境について解説され、すべてにおいて探査機・人工衛星・最新望遠鏡による研究が躍進している。著者欄には4人の名前があるが、各章の分野・コラムの執筆者は15名いる。それだけ専門的な研究解析や詳細データが掲載されているということだ。12月には「はやぶさ2」が帰還し、太陽系の学問はさらに進歩するだろう。

一方、『驚異の太陽』 は高校生でも理解できるように、電気や磁気といった高校物理の基礎知識を用いて太陽活動を紹介している。著者は、コンピューターによる数値シミュレーションを駆使した太陽研究の第一人者で、コロナやフレア、太陽風について解説してくれる。身近にある太陽がいかに複雑な活動をしているか興味深く知るとともに、シミュレーションのプロが数式を使わずにイメージ豊かな読み物として教えてくれることにも好感を持った。

惑星の代表といったら、やはり木星と土星だろう。『木星・土星ガイドブック』 は、第1章で両惑星の観測史、第2章で今年の動きと今後20年の観測好機、第3章で本体・表面・リングの詳細、第4章で代表的な衛星の姿、第5章で探査機の歴史と成果を解説。中学生や観測初心者でも理解しやすい図や、美しいカラー写真を200点以上掲載している。姉妹本である『火星ガイドブック』 とともに、手元に置いて活用したい。博物館学芸員として天文普及をしている著者が、実際に少年時代から望遠鏡で惑星を観測してきたからこそ「両惑星の魅力を多くの人に知ってほしい」という気持ちも伝わってくる。

同じように、「月の魅力を広めたい」という著者の感情が込められているのが『月の科学と人間の歴史』 。天体物理学の博士号を取得し、現在は科学ライターとして活躍するイギリス人の著者が、世界各地の月と人の関わりを語る。古代文明・宗教・科学・宇宙開発など、様々な角度から月について紹介する。

最後の2冊は小学生でも読めるように総ルビで、わかりやすく星を紹介する本。『おきなわの星』 は、沖縄のプラネタリウム解説員とイラストレーターが地元の出版社から発刊したガイドブック。沖縄の子供たちが星空を学ぶときに役立つことはもちろん、誰が読んでも沖縄の文化や民話に触れることができる。うちなーで「ティンガーラ」や「ふしぬやーうちー」を見たい。

『夏の大三角形のひみつ』 は、夏の大三角とその周辺にある星をたどる絵本。うさぎの父子が双眼鏡や望遠鏡を使いながら、織姫と彦星の“ひみつ”を見つけるファンタジー。こうやって一連の物語にすると、幼い子供でも星の並びを覚えやすくなり、夜空への興味も広がるだろう。

(紹介:原智子)