大質量星団「ウェスタールンド1」は銀河最強クラスの宇宙線加速器

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大質量星団「ウェスタールンド1」周辺のガンマ線が、宇宙線陽子と星間雲の衝突で発生したものであることが電波観測などにより明らかになった。この星団が銀河最強クラスの宇宙線加速器「ペバトロン」の候補という説を裏付ける成果だ。

【2026年8月4日 岐阜大学

宇宙線は光速に近い速さで宇宙空間を飛び交う粒子放射線のことで、陽子を主成分としている。宇宙線は銀河や物質の進化に多大な影響を及ぼすため、その発生源(加速源)を探ることは現代天文学の重要なテーマの一つだ。

天の川銀河内の宇宙線発生源としては、ブラックホールや大質量星団、超新星爆発など様々な候補が考えられている。このうち、超新星爆発では少なくとも約100テラ(100兆)電子ボルトの宇宙線が発生していることが観測からわかっているが、約3ペタ(3000兆)電子ボルトという最強クラスの宇宙線の発生源はよくわかっていない。こうした最強クラスの宇宙線を生み出す加速器(天体や現象)は「ペバトロン(PeVatron)」と呼ばれる。

2022年に、さいだん座の方向約1万3000光年彼方に広がる星団「ウェスタールンド1」の周囲から強力なガンマ線が検出された。ウェスタールンド1は太陽の10万倍ほどの質量をもち、天の川銀河内で最も質量の大きな若い星団(超星団)である。この検出によって、ペバトロン候補として再注目されるようになった。

ウェスタールンド1
ジェームズ・ウェッブ望遠鏡が撮影したウェスタールンド1(赤外線データの擬似カラー画像)(提供:ESA/Webb, NASA & CSA, M. Zamani (ESA/Webb), M. G. Guarcello (INAF-OAPA) and the EWOCS team

もしウェスタールンド1がペバトロンなら、ガンマ線はペタ電子ボルトの宇宙線陽子と周辺の星間雲との衝突で発生したものということになり、ガンマ線の光度は星間雲の密度に比例する。しかし先行研究では、そのような星間雲は存在しないと結論づけられていた。

岐阜大学の佐野栄俊さんたちの研究チームは、チリの電波望遠鏡「NANTEN2」と豪・オーストラリア望遠鏡コンパクト干渉計で取得した星間雲のデータを、ナミビアのヘス望遠鏡で得られたガンマ線画像と詳しく比較した。その結果、ガンマ線分布に一致する、太陽質量の160万倍にもなる星間雲が見つかった。

ウェスタールンド1周辺の星間水素の柱密度とガンマ線強度
(a)水素柱密度(カラーマップ、赤いほど高密度)とガンマ線強度(等高線)。(b)星団中心部の分子雲の空洞分布(提供:岐阜大学リリース、以下同)

また、チリのアステ電波望遠鏡による観測で、ウェスタールンド1の中心方向に空洞分布を持つ分子雲がとらえられた。この空洞は、星団内の大質量星からの強力な紫外線や恒星風から作られたと解釈できるもので、実際に恒星風によって毎秒5kmの速さで膨張していることもわかった。大きさと膨張速度から計算すると、空洞は70万年前に作られたものとみられる。

ウェスタールンド1で銀河最強レベルの宇宙線が発生している要因について、先行研究では、大質量星からの恒星風が宇宙線発生に直接寄与したというシナリオが提示されていた。これに対して今回佐野さんたちは、超新星爆発による宇宙線加速が効率よく起こったという説に着目している。星団に中性子星が存在していることから、少なくとも1回は超新星爆発が起こったことは確実だ。

爆発で生じた衝撃波によって生じる宇宙線のエネルギーは、衝撃波の速さと磁場強度に比例する。星団周辺の分子雲空洞内では衝撃波はほとんど減速されず、多くの大質量星の恒星風が入り乱れると磁場強度が高められるため、これら2つの要因によって高エネルギーの宇宙線を生み出せたのかもしれない。この説が正しければ、銀河最強クラスの宇宙線発生機構の解明が大きく前進することになる。

アステ望遠鏡の観測データからは、毎秒20km以上の速度差をもつ2つの分子雲が星団方向で入れ子状に重なっていることもわかった。どちらもジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した赤外線画像と空間的に対応し、ウェスタールンド1と同じ距離に位置しているとみられる。また、2つの分子雲は中間の速度をもつ淡い分子雲で接続されている。これらの特徴は、約400~500万年前に分子雲同士が衝突し、水素ガスが急圧縮されてウェスタールンド1が形成されたとするシナリオと矛盾しない。

分子雲の速度図
星団の赤外線画像に等高線で2つの分子雲を重ねたもの。(青)私たちに対して近づく分子雲、(赤)遠ざかる分子雲

大質量星団の形成機構は長年の謎だったが、近年になり星間雲同士の衝突によって引き起こされたとみられる現場が見つかり始めている。しかしウェスタールンド1については年齢が400~500万年と比較的古いため、星団の材料となった星間雲は大質量星からの強力な紫外線ですでに破壊され、見つからないと考えられてきた。星間雲が見つかったという今回の結果は、従来の常識を覆す重要なものといえる。

すでに他の星団からもガンマ線が検出され始めており、今後の研究によって宇宙線加速器としての星団の役割が明らかになるだろう。また、ウェスタールンド1の母体となった分子雲が壊されずに生き残っている理由についても、アルマ望遠鏡などによる観測で解明されることが期待される。

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