【訃報】流星天文学の発展や天文普及に貢献、長沢工さん

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10月28日、流星天文学の研究や天体力学、天文計算に関する多くの著作で知られる天文学者の長沢工さんが死去した。享年87。

【2019年10月30日 アストロアーツ】

長沢工(ながさわ こう)さんは1932年東京生まれ。1963年に東京大学理学部物理学科天文学課程を卒業し、1965年に同大学院数物系研究科天文コース修士課程を修了した。同年から東京大学地震研究所講師に就任し、測地学を専門として地震断層と重力異常の関係などを研究した。1967年には第9次日本南極地域観測隊の夏隊に隊員として参加した。並行して流星の観測的研究も行い、1978年にしし座流星群のスペクトルの研究で理学博士の学位を取得した。

長沢工さん
長沢工さん。2014年5月17日「大学天文連盟発足50年の会」にて(提供:星ナビ編集部)

1993年に東京大学地震研究所を定年退官し、同年から国立天文台の天文情報普及室(当時。1994年から広報普及室に改組)で教務補佐員として一般からの質問電話への対応などに携わった。同時に、国内のプラネタリウムや科学館向けに天文学に関するニュースをFAXで配信するサービス「国立天文台・天文情報レター」を開始。1995年からは「国立天文台・天文ニュース」として電子メールやウェブでも配信された。長沢さんが中心となって携わったこのサービスは、その後「国立天文台 アストロ・トピックス」、「国立天文台メールニュース」と名称を変え、現在でも配信されている。

長沢さんは天文学、特に天文計算や流星に関する解説書や海外の天文書の翻訳を数多く出版したことでも知られ、著作でのやさしく丁寧な語り口は天文ファンに親しまれた。主な著書に『天体の位置計算』(地人書館)や『天体力学入門(上・下)』(地人書館)、『流星 I/II』(恒星社厚生閣、共著・斎藤馨児)などがある。また、国立天文台広報普及室での日々を生き生きと描いた『天文台の電話番』(地人書館。2005年に新潮社より『はい、こちら国立天文台』のタイトルで文庫化)も話題となった。

1997年には長沢さんの業績をたたえて、北海道の円舘金さん・渡辺和郎さんが1992年に発見した小惑星に「(6498) Ko」と命名されている。

(文:中野太郎)