球状星団からの奇妙なX線フレア

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研究者と高校生のグループが協力して実施したプロジェクトで、X線天文衛星「XMMニュートン」の膨大なアーカイブデータから奇妙なX線源が発見された。

【2018年8月15日 ヨーロッパ宇宙機関

EXTraS(Exploring the X-ray Transient and variable Sky)は、ヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星「XMMニュートン」でX線変光天体を調べるプロジェクトだ。最近、15年に及ぶ観測で得られた50万個のX線源カタログが公開された。「次のステップは、莫大なデータを調べ上げて興味深いと思われるX線源を探すことです。学生のインターンシップとして、おもしろいだろうと思いました」(伊・ 国立天体物理学研究所(INAF) Andrea De Lucaさん)。

そこでINAFのSandro Mereghettiさんたちの研究チームは6人の高校生と協力して、データの解析を行った。そして、強力なX線フレアのような興味深い特徴がありながら、これまでの研究では報告されていなかったX線源をいくつか発見した。

そのなかの一つ、いて座に位置する球状星団NGC 6540に存在すると考えられるX線源は、とくに際立って興味を引くものだ。2005年9月、このX線源の明るさが50倍以上になり、わずか5分ほどで急速に暗くなったのである。

X線フレアの様子
球状星団NGC 6540に位置するとみられるX線源がフレアを起こした様子の動画(提供:ESA/XMM-Newton; A. De Carlo (INAF))

「生徒たちが見つけたX線源は、これまでに知られているどの天体とも異なる明るさの変化を見せていたので、私たちは詳しく調べることにしました」(INAF Ruben Salvaterraさん)。

太陽のような星では時々フレア(爆発)が起こり、今回のX線源のようにX線強度が上昇することがある。ただし、太陽フレアのような場合は数時間から数日間にわたってX線が強くなるので、今回の現象とは異なる。

今回のような短時間のX線増光は、中性子星のような高密度天体を含む連星系で観測される。しかし、この場合は今回の現象に比べてはるかに明るいものとなるという点が異なる。「今回の現象は、普通の恒星が起こすフレアにしては短すぎ、高密度天体に関連する現象としては暗すぎるのです」(Mereghettiさん)。

一つの可能性として、今回のX線源は彩層の活動が活発な連星系だというものがある。これは連星の彩層で起こるプロセスにより、強いX線活動が見られるタイプの天体だ。しかし、これまでに知られているこの種の天体の特徴に、今回の現象がきれいに当てはまるというわけでもない。

EXTraSのカタログには、低光度で短いフレアという特徴を併せ持つ天体が他にも埋もれていて、今回発見されたX線源は決して特別なものではない可能性もある。研究チームでは、今回発見されたX線源をさらに詳しく研究して性質に迫り、同時に似たような天体の捜索も行う予定だ。