矮小銀河の名残? ブラックホールを囲む若い星々

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【2012年2月16日 ハッブル宇宙望遠鏡

ハッブル宇宙望遠鏡の観測から、3億光年かなたの銀河にある中質量ブラックホールの周囲に、青く光る若い星々が存在していることがわかった。このブラックホールが今はなき矮小銀河の中心ブラックホールとして生まれたことを示唆するもので、銀河とその中心の大質量ブラックホールの成り立ちを理解する重要な手がかりとなりそうだ。


銀河ESO 243-49。印の箇所が、X線源となっているブラックホール「HLX-1」

銀河ESO 243-49。印の箇所が、X線源となっているブラックホール「HLX-1」を示す。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and S. Farrell (University of Sydney, Australia and University of Leicester, UK))

太陽のおよそ30倍以上もの大質量星が超新星爆発を起こしたあとには、比較的小さいブラックホールが形成される。だが多くの銀河の中心にあるような太陽の数百万、数億個分もの巨大質量ブラックホールがどのように形成されるかは、はっきりとはわかっていない。小中サイズのブラックホールの合体によって生まれるというのが有力な説のひとつで、ハッブル宇宙望遠鏡を用いた今回の研究成果もそれを支持している。

研究の対象となった中質量ブラックホールは、シドニー天文学研究所/英レスター大学のSean Farrell氏が2009年にX線宇宙望遠鏡「XMM-ニュートン」を用いた観測で発見したものだ。ブラックホールの周囲にはその重力に引かれて集まってきた物質により「降着円盤」が作られる。物質は吸い込まれる際の摩擦で高温となり、そのエネルギーがX線として放射され、観測される。

「とても明るいX線源」(Hyper-Luminous X-ray source)ということで「HLX-1」と付けられたこのブラックホールは、ほうおう座の方向2億9000万光年かなたの銀河「ESO 243-49」にあり、太陽の2万倍の質量を持つ。この規模のブラックホールには珍しく銀河の円盤面から離れた場所に位置している。

Farrell氏らはさらに、ハッブル宇宙望遠鏡による赤外線、紫外線、可視光線観測、そして衛星「スウィフト」によるX線観測でHLX-1を詳しく調べた。3億光年も離れている星々のひとつひとつを見ることは叶わないが、見える光から多くのことがわかる。ハッブルの画像には、降着円盤だけでは説明のつかない量の赤い光がとらえられていた。研究チームは、その色と明るさが天の川銀河近辺の銀河にある星団のそれと共通していることから、この光はブラックホールの周囲に高温の星の集団が存在する証拠であるとみている。「ハッブルのデータに見られるような光の色となるには、降着円盤と星の集団の両方からの発光が必須です」とFarrell氏は言う。

周囲に星団が存在するとすれば、HLX-1の起源、そしてなぜ銀河中のこの位置にあるかの謎がわかってくる。「若い星々の存在は、このブラックホールがはじめは非常に小さい矮小銀河の中心ブラックホールとして生まれたことを示しています。その後、ESO 243-49に銀河ごと飲み込まれてしまったのでしょう」(Farrell氏)。矮小銀河はばらばらになり、中心のブラックホールとその周囲の天体がわずかに残ったのだろう。

HLX-1が今後どこに向かいどうなるのかはわからない。ESO 243-49の中心に吸い込まれ、そこにある巨大ブラックホールと合体するのかもしれないし、安定した軌道に乗って銀河をめぐりつづけるのかもしれない。どのみち周囲のガス物質が尽き、X線の輝きは消えていく運命にあるだろう。

研究チームでは今年中にさらに観測を行い、消滅した矮小銀河とESO 243-49とがどのように関わり合ってきたかを探っていくという。

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