天の川銀河の「食べ残し」か「自由人」か、続々と見つかる矮小銀河

【2007年1月24日 PENN STATE Eberly College of Science

天の川銀河の周りを回る伴銀河が7つ、新たに発見された。いずれもこれまで知られている伴銀河よりずっと小さく、とても暗い。さらに8つ目の候補といえる小銀河もあるが、年老いた星と若い星が同居していて、今後も星を形成できるだけの材料を含むなど、特殊な性質を見せている。


新たに見つかった7つの伴銀河

新たに見つかった7つの伴銀河。クリックで拡大(提供:Vasily Belokurov, SDSS-II Collaboration and reproduced by permission, copyright 2007, Astronomy magazine, Kalmbach Publishing Co.)

米英などの研究者からなるチームは、スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS-II)を利用して天の川銀河の伴銀河、すなわち天の川の周りを回る銀河を7つ発見した(今後、詳細な確認が必要だが計8つの可能性もある)。この研究結果は、今年1月9日にアメリカ天文学会の会合で発表された。

天の川銀河の伴銀河としては大マゼラン雲と小マゼラン雲が有名だが、それ以外にもひじょうに規模の小さな銀河(矮小銀河)が多数天の川銀河を取り巻いていることがわかっている。矮小銀河はたかだか数百万個(天の川銀河は約2000億)の恒星しか含まない。

今回発見された矮小銀河は銀河北極付近の領域にあり、りょうけん座に2個、うしかい座、しし座、かみのけ座、おおくま座、ヘラクレス座に各1個の計7個。いずれもわれわれの知る伴銀河よりもずっと小さく、かなり暗い。やがて天の川銀河に吸収されてしまう運命にあり、すでに天の川銀河の重力に押しつぶされつつある。中でもおおぐま座IIではそのようすが顕著で、すでにばらばらにされてしまっているようだ。

銀河のハローや厚いディスクに存在するほとんどの星について元をたどると、矮小銀河が生まれ故郷であると考えられている。数十億年前をピークに天の川銀河は次々と矮小銀河を吸収したという。今回発見されたような矮小銀河は、言わば天の川銀河の「食べ残し」である。

一方、しし座Tと名づけられた8つ目の矮小銀河は他と性質が異なる。われわれからの距離は14万光年と、天の川銀河に重力で引き寄せられるか否かぎりぎりの位置にある。天の川銀河の周りを回っているというより、局部銀河群の中を浮遊している「自由人」なのかもしれない。

しし座Tが奇妙なのはそれだけではない。50億歳以上の年老いた星に混ざって、10億歳以下の若い星も同居しているようなのだ。さらに、星の材料となる中性水素ガスが存在する証拠もある。巨大な天の川銀河やアンドロメダ座大銀河に引き寄せられることなく局部銀河群の中で浮かぶ矮小銀河は多数存在し、しし座Tはその代表なのかもしれない。星をはぎ取られたわけではなく、最初からとても小さな銀河として生まれ、孤立した環境で少しずつ星を作り続けていたとみられる。

研究チームを率いた一人、英ケンブリッジ大学のDaniel Zucker氏は「天の川銀河を含む40ほどの銀河が属する局部銀河群には、まだ見つかっていない矮小銀河が1万個ほど潜んでいると考えられます」と話す。天の川銀河の周囲に関しては、長い間「ミッシングマス問題」が議論されてきた。天の川銀河の回転を説明するには、観測された物質以外の何かが周辺になければならないという理論で、ダークマター(暗黒物質)の理論にもつながった問題だ。依然としてギャップは大きいが、「矮小銀河が見つかれば見つかるほど観測値と理論値が近づきます」とZucker氏は述べている。

天の川銀河のそばには何がある?

銀河は宇宙に単独でポツンと存在しているわけではない。何十個、何百個の銀河が群れをつくっているのが普通だ。この群れを銀河群と呼んでいる。実は天の川銀河も銀河群をつくっている。この銀河群は他の銀河群と区別するため、特別に「局部銀河群」という名前で呼ばれている。局部銀河群は、アンドロメダ座大銀河のほか、大マゼラン雲、小マゼラン雲など計17個。理科年表は「不確定メンバーを含めると全体で30個以上になる」としており、局部銀河群の構成メンバーははっきりしていないのが実情だ。(宇宙のなぞ研究室 Q105.天の川銀河のそばには何がある?より [実際の紙面をご覧になれます])