火星の溝状地形は溶岩流の痕?/オポチュニティが目的地に到着

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【2011年8月15日 Physorg.comNASA

火星の地表に見られる大規模な溝の地形は、水の流れた痕と考えられ、かつて火星が生命に適した環境だったということをうかがわせるものとされている。だが、アメリカの研究者が、これは水路ではなく、粘性が低い熔岩の流れた痕ではという調査結果を発表した。


「バイキング1号」が撮影した火星

1976年に探査機「バイキング1号」が撮影した火星。中央に、全長3,000km以上にも及ぶマリネリス峡谷など、数々の大規模な溝状地形が見られる。クリックで拡大(提供:Viking Project)

テキサス工科大学地球科学部のDavid Leverington准教授は、「水路」説にはいくつかの矛盾点があるとする。

まずは、量の問題だ。これらの地形を作れる程の大量の水が地上に湧き出るとなると、とんでもなく透過性の高い地質でなくてはならない。また、現在火星に見つかっている水は、極地方の地表あるいは中高緯度の地表下に氷として存在するものだけで、この大規模な地形を作るほどの大量の水が存在していたのかという疑問があるという。

次に、地形の問題がある。火星の溝地形には河川のような堆積が見られず、末端部分にデルタ地形や河口の地層もない。その先にあるのは玄武岩の平地だ。その他にも火山の隆起や大量の熔岩など、多くの溶岩流の痕跡が見られる。

また、この地形に見られる鉱物学的な証拠も挙げられる。火星ができたばかりの頃には蒸気か液体の形で水が存在していたことが示されているが、水によって変質するはずの、鉄の多いかんらん岩質の岩盤が、35億年前のままになっているという。これはこの期間は水が存在しない環境だったことを示している。

水が存在した原始火星に生命が育まれ、水が失われた時期にも地表下でバクテリアなどの原始的な微生物が存在していた可能性はゼロではない。だがこの地形が水ではなく熔岩流によるものとすれば、その後の進化が妨げられる環境となってしまったに違いない。火星の水の歴史は、火星の生命環境の歴史を探るうえでも大きな鍵となるのだ。


「オポチュニティ」がエンデバー・クレーターに到着

「オポチュニティ」が撮影したエンデバー・クレーター周辺

8月6日に「オポチュニティ」が撮影した画像。左上にエンデバー・クレーターが広がっている。この3日後、クレーターの西側にある目標地点「スピリット・ポイント」に到着した。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/Cornell/ASU)

8月9日、NASAの火星探査車「オポチュニティ」が長期的な目的地「エンデバー・クレーター」に到着した。2007年〜2008年のビクトリア・クレーター探査の後、3年かけて21km離れたこの地にたどり着いた。

直径約22kmのエンデバー・クレーターでは、これまでオポチュニティが探査した中では最も古い地形が残っていると考えられている。火星周回機「マーズ・リコナサンス・オービター」(MRO)による上空からの観測で、高温多湿だった時代にできたと思われる粘土質が見つかって以来、詳しい探査が待ち望まれている場所だ。

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