フェニックス、土壌サンプルを熱して水蒸気を確認

【2008年8月7日 JPL

NASAの火星探査機フェニックスは、火星の北極地方で土壌を掘って氷を見つけた。加熱して分析した結果、それが確かに水であるということが明らかとなった。


(フェニックスがサンプルを回収した場所)

フェニックスの作業現場。薄青の線がロボット・アームの可動範囲を表し、青がすでに掘った地面、オレンジがこれから掘る予定の地面を表す。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University)

NASAの火星探査機フェニックスが火星の地面を掘って採取した土壌サンプルの分析が進んでいる。

フェニックスにはロボット・アームで採取したサンプルの正体を突き止めるためのいくつかの機器が搭載されている。TEGAと呼ばれる装置は、サンプルに熱を加えて物質が相変化する温度を突き止め、気化した物質を分析する、いわばオーブンの上で鼻をくんくんさせてにおいをかぐような分析機器だ。サンプルをゆっくりと加熱したところ微量の氷が蒸発したという測定結果が得られ、これをうけてNASAは7月31日(現地時間)、水を確認したと発表した。

火星はこれまでの探査でも地表付近に水の氷が観測・撮影されているので、水が存在する証拠としてはこれが初めてというわけではないが、火星の地表で採取したサンプルに水の含有を確証したのは今回が初めてであり、直接的な証拠として注目される。

現在の火星は乾燥しており、大気中の水の分圧は低い。火星のように気圧が低い条件の下では、水は低温で固体(氷)、高温で気体(水蒸気)となり、液体相としては存在することができないと考えられる。しかし火星には水の流れで侵食されたような地形や、たまった水が干上がって形成された蒸発岩などが見つかっていることから、過去のある時期には液体の水が豊富に存在したとも考えられている。生命の有無との関連、そして火星環境がどのような変遷をたどってきたのかなど、解明すべき謎は多い。

フェニックスは5月末に火星の北極地方に着陸して以来、いくつか手を焼く事態を乗り越えながらも着陸地点のようすを地球へ伝え続けている。探査の期間は変更され9月30日まで延長されたことも発表されている。