現在の火星にも液体の水が存在する可能性

【2009年6月8日 University of Arkansas

NASAの火星探査機フェニックスが検出した物質は地球のほとんどの生命にとって猛毒だが、現在の火星に液体の水を存在させている可能性もあるらしい。


(フェニックスの土壌分析装置に運ばれた火星の土の画像)

フェニックスの土壌分析装置MECAに運ばれた火星の土。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University)

2008年5月に火星の北極付近に着陸したNASAの火星探査機フェニックスは、水の氷を初めて直接検出するという成果をあげた。一方で、土壌に高濃度の過塩素酸塩が含まれている証拠も得られている。過塩素酸塩はひじょうに毒性が強いため、単純に考えれば生命には不利と言える。ただ、別の性質に注目すると興味深い結論が得られるようだ。

米・アーカンサス大学のVincent F. Chevriere教授らは、フェニックスが発見した過塩素酸塩が火星のような環境下で示す性質を調べた。すると、過塩素酸塩が溶けた水は、液体のまま安定する可能性が示されたのである。現在の火星は気温差が極端なので、水は凍ってしまうか蒸発してしまうかのどちらかだと考えられていた。

しかし、それは純粋な水の場合。過塩素酸塩のような物質の水溶液は、凍る温度が下がる。身近な例では、食塩水が摂氏0度よりも冷たくなることや、道路に積もった雪に塩化カルシウムをまくと溶けることなどがあげられる。

Chevriere教授によれば、過塩素酸マグネシウム水溶液が凍る温度は摂氏マイナス67度と、着陸地点の気温と近い水準にある。夏の間、1日に数時間は水溶液が液体の状態で存在できる可能性があるようだ。Chevrier教授は「生命といっても大量の水が必要とは限りません。ただ、いくらかの間、液体の水が必要なのです」とコメントしている。