土星探査機カッシーニ、タイタンの低緯度域で雨を観測

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【2011年3月22日 NASA

探査機「カッシーニ」が、土星最大の衛星タイタンの赤道付近の砂漠地帯で雨が降っていることを確認した。これまでタイタンにはメタンなどの循環があると言われていたが、実際に低緯度域に雨として発見されたのはこれが初めてだ。


(カッシーニよるタイタンの写真)

カッシーニが撮影したタイタン。可視光線と近赤外線でそれぞれ撮影した画像の合成写真。赤道域に白い雲が帯状に見えている。クリックで拡大(提供:NASA)

NASAの土星探査機カッシーニは2004年に土星軌道に入り、2度にわたるミッションの延長を受けて現在は2017年までの予定で土星圏の探査を続けている。2004年12月には着陸機ホイヘンスを土星最大の衛星タイタンへ向けて切り離し、タイタンの地表面の撮影や霧雨の確認など多くの成果を挙げている。

これまでタイタンには乾燥した赤道域に液体が流れた跡のようなものが発見されていたが、液体メタンでできたと思われる湖は極域でしか発見されていなかった。この赤道域の乾いた砂漠地帯に見られる、液体が流れたような地形は、季節によって湿った環境になるのか、それともかつて湿った環境にあったことを示しているだけなのか、わかっていなかった。

土星は太陽の周りを30年かけて1周し、2009年8月に季節の変わり目(注1)を迎えた。タイタンでも赤道の真上を太陽が横切り、これまで日の当たっていなかった北半球の季節がちょうど冬から春へと変わる時期にあたっている。

南半球が夏にあたる2004年頃には南極域に雲が多く見られていたが、季節の変わり目になって赤道域付近でも雲が見られるようになってきた。2010年9月27日に赤道域で矢のような形の嵐が現れており、翌月には大きな帯状の雲が現れていた。そして短期間のうちに地表面の色が暗くなっていたことが発見された。

地球でも砂地に雨が降ると表面が暗くなるとの同じように、タイタンでもメタンの雨が降って表面の色が変わったのではないかと考えられており、赤道域の砂漠地帯の地形はこのような季節の変わり目に発生する雨によって形成された可能性がある。

このような赤道域の帯状の雲は地球の赤道域でもよく見られる(注2)ため、地球の気象と比較することがタイタンの気象の理解につながると考えられる。

注1:「季節の変わり目」 2009年8月11日に土星の春分を迎え、土星の赤道の真上から太陽光が当たった。

注2:「赤道域の雲」 赤道域は強い太陽光によって水分が蒸発し、上昇気流ができやすいため、赤道に沿って雲ができることがある。


カッシーニの位置と航路

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、カッシーニやメッセンジャー、「はやぶさ」など、主な探査機15機の設定日時における位置や航路を表示することができます。

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