土星の衛星エンケラドスに、彗星の有機物に似た物質を発見

【2008年4月10日 JPL News Releases

土星の衛星エンケラドスで、南極にある大きなひび割れから水蒸気などとともに、有機物が噴出していることが明らかとなった。この有機物は彗星に含まれる有機物に似ており、研究者を驚かせている。


(エンケラドスの南極にある大きなひび割れからの熱放射をとらえた画像)

エンケラドスの南極にある大きなひび割れ(長さ約150km)からの熱放射。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

(エンケラドスの噴出とカッシーニがたどった観測経路を示した図)

エンケラドスの南極にある噴出と、噴出を背後から観測したカッシーニの経路(矢印)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/University of Colorado/SSI)

今年3月、NASAの土星探査機カッシーニは、エンケラドスのフライバイ(接近通過)を行った。その際、エンケラドスの南極にある噴出口から、どんな成分の物質が噴き出しているのかを調べた。

明らかとなった成分は、揮発性のガス、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、そして、なにより研究者を驚かせたのは、彗星の内部に存在する有機物と同じような物質の存在だった。

同じような有機物が存在するとはいえ、彗星とエンケラドスは異なる天体である。カッシーニに搭載されているイオン中性質量分析計の主任研究員であり、米国サウスウエストリサーチ研究所(Southwest Research Institute)のHunter Waite氏は、「もちろん、エンケラドスは彗星ではありません。エンケラドスの活動のエネルギーは、エンケラドスの内側からもたらされるものです。一方、尾を持ち、太陽の周りを回る彗星のエネルギーは、太陽の光です」とその違いを説明している。

また、新しく行われた精密な赤外線観測によって、噴出の源である複数の大きなひび割れの温度が、以前の観測値より摂氏35度も高いこと、さらに他の領域より摂氏115度も高いことが明らかになっている。

カッシーニの赤外線分光器担当の科学者である、米国サウスウエストリサーチ研究所のJohn Spencer氏は、「これら最新のデータは、噴出を引き起こすエネルギー源を理解するのに役立ちます。また、このような高い温度は、エンケラドスの活発な活動を示しており、表面からそう深くない場所に液体の水が存在している可能性を示唆しています」と話している。

さらに、NASAのジェット推進研究所でカッシーニ・プロジェクトにたずさわるDennis Matson氏は、「エンケラドスは温暖で、水もあり、有機物も存在します。生命誕生に必要とされる残る最後の物質は、液体の水です」と話している。