中国の宇宙ステーション「天宮1号」、間もなく大気圏再突入

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中国の宇宙ステーション「天宮1号」が、1週間以内程度に大気圏に再突入するとみられている。落下時期や場所の正確な予測のために観測が行われており、ドイツの研究機関がとらえた同機のレーダー画像が公開された。

【2018年3月27日 ESA rocket science blogFHR

2011年9月に打ち上げられた中国の「天宮1号」は、大きさ10.4m×3.4m、太陽電池パネルの大きさ3×7m(×2枚)、総重量8.5tの宇宙ステーションだ。天宮1号は同年11月に無人宇宙船「神舟8号」との無人ドッキングを成功させ、2012年には有人宇宙船「神舟9号」とドッキングして宇宙飛行士が数日間天宮1号に滞在した。2013年にも有人宇宙船「神舟10号」とドッキングし、以降は無人の宇宙ステーションとなっていた。

天宮1号は、2015年12月までは運用高度である上空330kmから390kmを飛行していた。しかし、同機は2016年に地上からの指令による制御ができなくなってしまった。そのため、薄い大気の影響を受けて徐々に高度を下げ、いずれ大気圏に再突入するとみられていた。

天宮1号の高度
天宮1号の高度(提供:Heavens-Above.com)

本来、こうした衛星が大気圏に再突入する場合は市民生活に被害を及ぼさないように落下日時や位置をコントロールするが、天宮1号は制御不能のため、いつどこに落下するかはわからない状況だ。

昨年の時点では、天宮1号の大気圏再突入は今年1月から3月の間と予想されていたが、ヨーロッパ宇宙機関・欧州宇宙運用センター(ESOC)の最新予測では3月30日から4月2日の間ごろになる可能性が最も高いとされている。また、再突入位置については、天宮1号の軌道傾斜角が43度であることから、北緯43度から南緯43度の間のどこかということになる。

宇宙天気の状況や天宮1号の回転、壊れ具合といった数多くの要素が影響を及ぼすため、いつどこに再突入するのかに関する正確な予測が可能となるのは数日前から直前となる見通しだ。ほとんどの部品は大気圏再突入時に燃え尽きるはずだが、一部は地表まで達する可能性がある。ただしそれらの破片が直接的な被害をもたらす確率は極めて低い。

天宮1号の大気圏再突入に関する正確な情報を提供するため、独・フラウンホーファー高周波物理学・レーダー技術研究所(FHR)では口径34mのパラボラアンテナを有する追跡撮像レーダーシステム「TIRA」を用いて天宮1号のモニタリング観測を数週間前から開始しており、機体の状態や回転状況を確認している。

天宮1号
「TIRA」がとらえた、高度約270kmを飛行中の天宮1号(提供:FHR)

なお、天宮1号が空を横切っていく光跡が、29日、30日の明け方に見られるかもしれない。詳しくは以下〈関連リンク〉のHeavens-Aboveのページを参照のこと。

〈参照〉

〈関連リンク〉

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