太陽系ができたころの超新星爆発はなかった?

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【2012年12月19日 シカゴ大学

アメリカの研究者らが、隕石に含まれる鉄の精密な分析から、太陽系が形成されたころの環境について新たな見解を発表した。


へび座の星形成領域で産声を上げる星々

赤外線天文衛星「スピッツァー」がとらえた、へび座の星形成領域で産声を上げる星々(ピンク)。太陽系が生まれた45億年前はどのような環境だったのか、その研究が進められている。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/University of Arizona)

シカゴ大学の研究者らが隕石に含まれる鉄の同位体を精密に測定したところ、その量が考えられていたより少ないことがわかった。

同位体とは、中性子の数の違いにより質量などが異なる原子のことだ。今回調査の対象となった60Feは超新星爆発でしか作られない鉄の放射性同位体で、これまで隕石に多く含まれるとされたため、太陽系ができたころにすぐ近くで超新星爆発が起こった証拠と考えられていた。

だがHaolan TangさんとNiolas Dauphasさんは、不純物を取り除いたより正確な分析により、実は60Feの割合が低いことを突き止めた。また、60Feと同様の分布を示す58Feの分布を調べたところ、多くの隕石サンプルに同程度含まれていたことから、60Feが太陽系に均一に分布していたこともわかった。

60Feの比率が意外に低かったということは、その由来は太陽系形成期の超新星ではなく、そのずっと以前から星間物質としてまばらに漂っていたものということだ。

だがここでもう1つの問題が残る。やはり超新星爆発の痕跡とされる26Al(アルミニウム)の比率の多さだ。TangさんとDauphasさんはこれについて、太陽の20倍以上もの質量の恒星がそのガスの外層を吹き出した「恒星風」のものであるという説を提案している。これなら、60Feは恒星内部に留まりまき散らされることがないので、分析結果とつじつまが合う。

「今後太陽系の起源と形成のシナリオを探るうえで、今回の研究成果が重要になってくるでしょう」(Tangさん)。