探査機が見た、太陽系初期を伝える小惑星ベスタの地形

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【2012年5月15日 NASA

小惑星ベスタを周回調査中の探査機「ドーン」の観測から、ベスタ形成の歴史や月との類似性について新たな見解が得られた。


ベスタの鉱物組成マップ

ベスタの鉱物組成マップ。紫がダイオジェナイト(マグネシウムに富むケイ酸塩岩)、黄色がユークライト(鉄に富む)の割合が大きい場所。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA/INAF/MPS/DLR/IDA。以下同)

ベスタ上空フライトのシミュレーション

リンク先では、ベスタの上空フライトシミュレーション動画を見ることができる

小惑星ベスタの地表に、太陽系初期の時代の様相を伝える多様な地形があることが明らかになった。いろいろな面で、他の小惑星よりも地球の月に類似しているようだ。「ドーンの観測で、ベスタの歴史に関する大まかな仮説理論が正しかったことがわかりました。さらに、その詳細についても明らかになったのです」(NASAの研究員Carol Raymond氏)

2011年7月にベスタ周回軌道に入ったNASAの探査機「ドーン」は、ベスタが惑星に近い性質を持っていること、また地球や月とのつながりを示した。

これまでの観測で以下のことが明らかになっている。

  • ベスタはいくつかの層から成る惑星の“建材”で、中心には鉄のコアを持っている。こうした天体が太陽系初期から残っているのがわかったのは初めてだ。その複雑な地形は、約45.6億年前にベスタが地殻、マントル、鉄のコア(直径およそ110km)に分かれたプロセスに由来すると思われる。こうしたプロセスは、地球や火星のような岩石惑星や月なども経てきたものだ。
  • ベスタの地表における鉄やマグネシウムに富む輝石の組成が、ベスタ由来と推測されていた隕石グループのそれと一致していることも確認された。この隕石グループは、地球に落ちてくる全隕石の6%にもなり、ベスタは最大の隕石の故郷ということになる。
    ベスタの地形は非常に険しく起伏に富んでおり、傾斜が急でほぼ直角なクレーターでは、地すべりが頻繁に起こっている。
  • 南半球のレアシルヴィア(Rheasilvia)盆地の中央丘は、月などと比べて、クレーターのサイズの割に高く広い。土星の氷衛星のような低重力の天体との類似点もあり、また地形の明暗は月のパターンとは異なっている。
  • 大型クレーターが作られた時期も割り出すことができた。南半球のヴェネネイア(Veneneia)盆地は約20億年前に、ベスタ最大の盆地レアシルヴィアは10億年前に、大規模な天体衝突によって作られたという。月の大規模な盆地が非常に古いものであるのに比べ、ベスタ最大の衝突痕がこれほど新しいものというのは驚きだ。

2007年に打ち上げられたドーンは、2011年からベスタの周回観測を行っている。今年8月26日に軌道を離れ、次の観測目標である準惑星ケレスに向かう。

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