小惑星の観測と進路予測で地球衝突の可能性を小さく

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【2012年6月18日 NASA

2040年に地球衝突するわずかな可能性が示されていた小惑星2011 AG5。今後どのように観測精度を高めて予測される衝突確率をゼロにしていくかという見通しがNASAで協議された。


小惑星2011 AG5の軌道と現在位置

太陽系内での小惑星2011 AG5の軌道と現在位置。今後の観測で衝突確率をせばめていく。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

2011年1月に米アリゾナ大学のサーベイ観測で発見された小惑星「2011 AG5」は、2040年に地球に衝突する可能性がわずかに示されていた。5月29日にNASAのゴダード宇宙飛行センターで行われたワークショップで、こうした衝突可能性のある天体(略称PHA)について議論が行われ、この天体が地球とぶつかることなく通り過ぎる確率は今後4年間の観測で99%以上になるはずだという見込みを明らかにした。

PHAは地球近傍天体(NEO)の一部で、地球軌道の800万km以内に接近する軌道を持ち、なおかつ衝突時にダメージを与えるものを指す。幅およそ140mの小惑星2011 AG5が衝突した場合、被害は100数十km範囲に及ぶと予測される。「実際に衝突する確率は非常に低いと考えられますが、引き続き注意し、今後の観測次第で次の行動に移せるよう備えておく必要があります」(NASAのLindley Johnson氏)。

以前、2036年に衝突する可能性が指摘された小惑星アポフィスは、2005年〜2008年の観測で予測軌道が絞りこまれ、衝突確率が大幅に下がった。「小惑星を観測し位置情報を取得していくことで、今後の進路をより正確に計算できます。観測回数が少ないと予測される進路の幅は広くなりますが、観測回数を重ねるうちにその幅を狭め、多くの場合衝突の可能性はゼロと判断することになります」(NASAのDon Yeomans氏)。

2011 AG5は現在火星軌道よりも外側に位置し、昼間の空の方向にあるため観測機会が限られる。2013年秋には距離は遠いものの深夜の空に見え、宇宙や地上の望遠鏡で動きを追跡できるようになる。衝突の可能性についてもっと明確になるのは2023年2月のことだ。地球から180万kmの距離を通過する際、幅365kmのある領域を通過すれば、地球の重力に引っ張られて2040年2月5日に衝突するような軌道に入る可能性がある。それ以外なら、衝突はなしだ。Johnson氏によれば、この領域を通過する可能性は非常に少ないという。

危険はないというのが大方の予想ではあるものの、2013年〜2016年の観測結果次第でこの衝突確率が上がる可能性もわずかながらある。だが、たとえそうなったとしても、小惑星のコースを変えるミッションのうち少なくともどれか1つを計画実行する十分な時間はあるということだ。

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