ベスタでの水存続は理論的に可能 ただいま実地捜索中

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【2012年1月27日 NASA

これまでの観測で水が皆無と思われている小惑星ベスタ。だがその地表の半分は日の当たらない低温の領域が占め、水が存在するとすれば氷として存続できることがわかった。探査機「ドーン」による調査結果が待たれる。


南極側から見たベスタ

南極側から見たベスタ。中央には直径480kmの巨大クレーターが見える。「ドーン」が2011年9月に上空2700kmから撮影した。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA)

小惑星ベスタは、火星軌道と木星軌道の間の小惑星帯の中で準惑星ケレスに次いで2番目に大きい天体だ。自転軸の傾斜角が27度と大きいため、一年中(ベスタの1年は地球の3.6年にあたる)全く日が当たることのない永久影はほとんどないと考えられている。

そのベスタに水が存在するかしないかは、形成進化や小天体の衝突、周辺環境との相互作用などベスタの歴史を探るヒントになる。他の太陽系天体も同様の経過をたどってきたとされるため、それは太陽系を包括的に理解することにもつながる。また、水の氷は将来の有人探査のリソースとしても重要なものだ。

Timothy Stubbs氏とYongli Wang氏(NASA/米メリーランド大学)はハッブル宇宙望遠鏡などの観測データに基づいてベスタの温度の試算を行い、その極域は水の氷が地表下で存続するのに適した環境であることをつきとめた。

研究によれば、ベスタの両極は平均しておよそマイナス130度で、これは地下数mのところで水の氷が存在し続けられるぎりぎりの温度だ。一方、赤道付近では約マイナス120度で、地下数mに氷が存在し続けるには高温すぎると考えられる。

「極域は赤道付近より温度が低いですが、夏の長い期間日光を浴びつづける(注:地球でいう白夜)という点では氷が存在し続けるうえで不利になります。ですから、もしこの領域に水の氷が存在するとすれば、乾いたレゴリスの比較的深い層にあるのかも知れません」(Stubbs氏)

また、直径10km程度の比較的小さなクレーターでも、季節にかかわらず平均温度がマイナス170度と低温で、氷が存在できることもわかった。ただし、夏の間には日光が射して一部の氷が飛んでしまうかもしれない。

今までの地球からの観測ではベスタに水は見つかっていないが、現在探査機「ドーン」がベスタを周回し、すぐそばから「ガンマ線中性子検出器」で水探しを行っている。

ドーンはベスタの後に、やはり小惑星帯にある準惑星ケレスを訪れる。ベスタとケレスは、惑星になりかけたものの木星に材料を奪われて成長しきれなかったと考えられており、この2天体を調査することで、惑星の進化に水がどのような役割を果たしたかを探ることができる。

ドーンによる調査結果は数か月後に出る予定だ。