金星探査機「あかつき」、軌道投入は2015年か2016年

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【2012年2月3日 JAXA

JAXAは、昨年11月に金星に向けての軌道修正を完了した「あかつき」について、金星軌道再投入の見通しを発表した。使用できる観測機器に制限が出るが2015年に周回軌道に投入するか、観測機器に問題ない軌道ではあるものの経年劣化が心配される2016年に軌道投入するかという2回のチャンスがある。探査機の状態を見ながら、今後も検討が行われることとなっている。


2015年と2016年の周回軌道

2015年(緑)と2016年(赤)に「あかつき」を軌道投入した場合の周回軌道の図。クリックで拡大(提供:JAXA)

2011年9〜11月にかけて金星に向けての軌道修正や不要となった酸化剤投棄を完了した探査機「あかつき」は、現在2015年に金星に接近する軌道で慣性飛行を続けている。

探査機が大きな故障もなく2015年に金星にたどり着けば、そのときに金星周回軌道に乗せることはできるが、太陽との関係で当初予定とは異なる極軌道に近い周回軌道に入れる必要がある。「あかつき」の科学観測の目的として「高速大気循環メカニズムの解明」()と「雲の近接撮影や雷の観測」があるが、2015年に極軌道に近い周回軌道に投入した場合は「高速大気循環メカニズムの解明」について観測時間に制限が生じる可能性が高く、どの程度の科学的成果が得られるか不明だ。

別の案としては、2015年には金星スイングバイを行い、2016年に赤道面に近い金星周回軌道に投入することもできる。この場合は得られるデータの精度が悪くなることが予想されるものの、どちらの目的も概ね達成できると考えられる。しかし設計寿命を考えると、探査機の運用上問題が生じるかもしれない。

2015年の金星接近までにあと7回の近日点通過があり、その際の温度や紫外線環境の影響を調査する必要がある。現在も地上で探査機の温度予測の精度向上を目指した試験が進められている。設計寿命と得られる観測成果を考えると難しい判断を迫られているが、探査機の状態を見極めつつ、観測成果を最大化するような計画を立てていくとしている。

注1:「高速大気循環メカニズム」 金星の大気には「スーパーローテーション」と呼ばれる、自転速度よりも高速に惑星表面を回る雲が発見されている。通常雲は自転速度よりも速く移動することはできないと考えられているため、何故このような現象が金星で見られるのかを探ることが「あかつき」の大きな目的の1つになっている。

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