タイタンのメタン湖の謎、シミュレーションで解明

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2012年1月10日 カリフォルニア工科大学

土星の衛星タイタンにみられるメタンの循環についてシミュレーションを行った結果、メタンの湖に関するいくつかの謎に説明がつけられ、今後タイタンがどのような姿を見せるかという予測に成功した。


探査機「カッシーニ」が撮影したタイタン

探査機「カッシーニ」が撮影したタイタン。窒素やメタンでできた厚い大気で覆われている(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

土星の衛星タイタンはその表面が厚い大気で覆われており、探査機「カッシーニ」が着陸機「ホイヘンス」を投入したことでも有名な天体だ。ホイヘンスやカッシーニの観測によれば、タイタンの表面には川のような地形があり、メタンの雨や湖といったメタンの循環を示すものが多数見つかっていた。

今回、アメリカの研究チームが世界で初めて、タイタンの大気やメタンの循環に関する3次元シミュレーションを行った。シミュレーション期間は135タイタン年、地球で言えば3000年に相当する。その結果、未解明であったいくつかの謎について説明ができるようになった。

謎のひとつは、メタン湖が極付近に集まっており、しかも南半球よりも北半球の方がその数が多いのはなぜかということだ。これについては、極付近では受け取る太陽のエネルギーが少ないためメタンが気体ではなく液体として存在できるので、メタン湖は極付近に集中している。さらに、土星は楕円軌道を動いているため、タイタンの極地方の雨季にあたる夏は北半球の方が南半球より長くなる()。南半球では激しい雨が降るが、全期間を通してみると夏が長い北半球の方が、結果的には湖の数が多くなるのだ。

ふたつ目の謎は、この10年ほど南半球に雲が固まっているのはなぜかということだ。タイタンはここ10年ほど南半球が夏であったため、雲が多かったのではないかと考えられる。

さらにもうひとつ、赤道付近は乾いた場所であるにも関わらず雨によって作られた地形や嵐が見られるのはなぜかという謎もある。一般にタイタンの天気は変化に乏しく、とくに赤道域では数年もの間一滴も雨が降らないことがあるほど乾燥した場所だと考えられていた。しかし実際には雨が降ったことによる浸食地形が見られており、シミュレーションによる再現が望まれていたのである。

シミュレーションの結果、タイタンの春分や秋分のころ赤道付近で激しい雨が降ることがわかった。めったに雨は降らなくても、降るときには激しく降るために浸食地形ができているのだと考えられる。

シミュレーションでは今後数年間でタイタンの雲がどうなるかという予測も行われた。タイタンは2009年から季節が移り変わり始めており、次の2年以内には北極付近で雲が形成され、今後15年にわたって北半球の湖の数が増えると予想される。

カッシーニのミッションは2017年までは継続することが決定している。今回のシミュレーションが正しいかどうかも、数年のうちに観測ではっきりとするかもしれない。

注:「夏の長さ」 土星の公転軌道は楕円であり、太陽から遠いところほど公転速度が遅くなる(ケプラーの第2法則:面積速度一定の法則)。土星が太陽から遠いところでタイタンの北半球が夏になるので、速度が遅いために長期間を過ごすことになり、南半球の夏の時期より長くなる。

〈参照〉

〈関連リンク〉

〈関連ニュース〉

〈関連製品・商品〉