タイタンに見られる、メタンの川と水の氷を吹き出す火山

【2005年1月24日 ESA News (1) / (2)

地球から12億キロメートル離れた土星の衛星タイタンに関するデータの分析が進んでいる。NASAは今月21日、探査機ホイヘンスの観測から、タイタンの地形は地球とよく似ており、そこには川や島に見える地形が存在していると発表した。

(タイタン表面の川のような地形) (島のような地形)

(上)タイタン表面に見られる川のような地形、(下)島のような地形。ともにクリックで拡大(提供:ESA/NASA/JPL/University of Arizona)

上の画像に見られるのは、明るい領域から暗く平坦な領域に向かって川のような地形が流れ込んでいるようすだ。その先には海(または湖)、海岸(湖岸)に沿った島や砂州なども見られる。湖や川は画像中では乾いているようだが、メタンの雨が降ったのはそれほど昔のことではないと推測されている。

一方、タイタンの地表下の物質については、ばら砂のような物質でできているようだ。メタンの雨が長い間にわたり降ったことによるものか、地下で溶けた液体が表面に上がってきたことによるものだと考えられている。

また、タイタンでの火山活動に関するデータも得られている。大気中で発見された元素アルゴン40は、タイタンで起きた過去の火山活動を示しているようだ。ただし、タイタンで火山活動を引き起こしたのは溶岩ではなく、水の氷やアンモニアだろうと考えられている。

ホイヘンスがタイタン地表に着陸する際、表面の土が暖められ、そこからメタンが噴出した。このことから、タイタンの地形形成にメタンが大きな役割を果たしたことが裏づけられた。メタンは雲を作り、雨となって地表に降り注ぐことで、地表の地形が作られたのだろう。また、表面を覆っているのは、砂ではなく大気中から凝結した有機物が降り積もったもののようだと分析されている。

メタンが流れ、大気から有機物質が表面に沈殿し、水の氷が吹き出す火山の存在が示されたタイタンの世界に、専門家は興奮を隠せないようだ。しかし、その分析はまだ始まったばかりで、得られたデータにはさまざまな情報が含まれている。今後数年間、専門家は多忙な日々を過ごすことになりそうだ。


高度10km上空からの眺め

(約10km上空から見たタイタンの画像)

約10km上空から見たタイタンの画像。クリックで拡大(提供:ESA/NASA/JPL/University of Arizona)

上空から捉えられたタイタン地表の写真も公開されている。約30枚の画像をつなぎあわせて作成されたこの写真は、突入機が降下中、高度13kmから8kmの間で撮影したものだ。ホイヘンス突入機は、このような景色を直下にしながら、ほぼ垂直に秒速5mほどの速度で落下したのである。