超新星爆発は宇宙塵の大きな生成工場

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【2011年7月12日 ヨーロッパ宇宙機関/NASA

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の赤外線天文衛星「ハーシェル」の観測で、超新星1987Aが予想以上に明るく、これまでの見積もりよりもはるかに大量の塵を生成していることがわかった。この発見により、比較的初期の宇宙に見られる塵は超新星爆発が起源である可能性が出てきた。


今回観測した超新星残骸1987A

今回観測した超新星1987A。「ハーシェル」が撮影した画像(左)とハッブル宇宙望遠鏡の画像(右)。クリックで拡大(提供:ESA/Herschel/PACS/SPIRE/NASA-JPL/Caltech/UCL/STScI and the Hubble Heritage Team (AURA/STScI/NASA/ESA))

「ハーシェル」のイメージ図

赤外線天文衛星「ハーシェル」のイメージ図。クリックで拡大(提供:ESA - C. Carreau)

今回活躍した「ハーシェル」は遠赤外線での観測を得意としている望遠鏡だ。大マゼラン雲に存在する、マイナス250〜260度といった極低温の塵が発するような光を観測していた際、大マゼラン雲の天体SN 1987Aが遠赤外線で強い光を放っていることがわかった。その明るさは、太陽が電波からガンマ線まで全ての波長域で放出しているエネルギーのなんと220倍にもなる。

このSN 1987Aとは、1987年2月に大マゼラン雲で発生した超新星1987Aの残骸で、この400年では最も地球に近い位置で起こった超新星爆発であった。この爆発で放出されたニュートリノの検出は、小柴昌俊氏(東京大学名誉教授)がノーベル物理学賞を受賞するきっかけにもなった。

観測された遠赤外線について慎重に計算した結果、これは大量に存在する塵が光っているものだとわかった。宇宙空間を漂う塵は星や惑星の材料となり、私たち人間を構成する元素もこれら星の塵からできているが、見つかった塵の量は太陽の0.4〜0.7倍に相当し、地球程度の天体であれば20万個も作れる量になる。

こういった塵は、歳を取った恒星である赤色巨星がゆっくりと大気を放出する過程で一緒に作られ、宇宙空間にばら撒かれているものと考えられてきた。しかしこの方法では塵を生成するのにとても時間がかかってしまうため、宇宙の比較的初期の頃に存在していた塵の説明が付かない。

一方、超新星爆発は重くて寿命の短い星の最期に起こる現象であるため、塵を作るのにさほど時間はかからない。今回の発見のように超新星爆発によって塵生成が起こるとすれば、宇宙初期に塵が存在することの説明が付くかもしれない。

今回のハーシェルの発見は、宇宙を見る新しい「窓」を開けたと言えそうだ。