「進む先に過去がある」超新星SN 1987AのX線画像

【2005年8月24日 Chandra Photo Album

X線観測衛星チャンドラが捉えた、超新星「SN 1987A」により生じた炎のリングの新しい画像が公開された。

(SN 1987AのX線と可視画像) (超新星SN 1987Aの構造)

(上)左はチャンドラによるX線画像、右はハッブル宇宙望遠鏡による可視光画像(提供:X線- NASA/CXC/PSU/S.Park & D.Burrows. 可視- NASA/STScI/CfA/P.Challis )、(下)超新星SN 1987Aの構造。ラベルは上から順に[(ガス雲内端の)赤道方向の環][熱された突起構造][衝撃波の前面][熱いガス][はね返った衝撃波][冷えた放出物](提供:NASA/CXC/M.Weiss)共にクリックで拡大

われわれから約16万光年離れた近傍銀河、大マゼラン雲に現れた超新星SN 1987Aは、過去400年間でもっともまぶしくかがやいた超新星で、爆発当時は肉眼でも見ることができたことで知られている。

超新星SN 1987Aとなった星(Sanduleak -69°202,略称 SK-69)は、爆発を起こす前は太陽の20倍程度の質量を持っていた。SK-69はほぼ1000万年前に生まれ、およそ100万年前には恒星風によって外層をほとんど失い、星の周りに広がるガス雲を作り出した。そして爆発前には、熱くなった表面から吹き出した高速の風によって、冷たいガス雲の中に空洞が生じた。

チャンドラは、1999年にはこの空洞の中を進む衝撃波を捉えていた。空洞の端には、密度の濃いガス領域が広がっていて、これに衝撃波がぶつかることでX線放射が増加することが予測されていた。一番上の画像は、その様子をX線(チャンドラ、左)と可視(ハッブル宇宙望遠鏡、右)で捉えたものだ。可視画像には、宝石をちりばめたネックレスのように、何カ所かで明るく輝いている様子が写っている。また、X線からは、リング全体が数百万度に熱せられていることがわかる。

チャンドラが測定したX線スペクトルによれば、こうした特徴は、外側のガス雲から内側に伸びる突起状の構造に、衝撃波がぶつかったことによるものだ。こうした突起(下の図中、白い部分)は、爆発前にSK-69から吹き出した高速の恒星風がガス雲にぶつかったときに生じたものだ。衝撃波は、SK-69がはるか昔に放出した、未知の大きさのガス雲の一番内側にようやく到達したところだ。ガス雲の中を進むにつれ、衝撃波により紫外線とX線が放射され、星間ガスを照らすことだろう。そのとき、チャンドラの科学者チームの一人が語るように、「SN 1987Aは自分の過去を照らし出す」のだ。

なお、リリース元では衝撃波が広がる様子のアニメーションが公開されている。


超新星1987A : 1987年2月23日、大マゼラン雲中に出現した超新星。極大等級2.9等。銀河系近傍では1604年のケプラーの新星以来の出現で、さまざまな観測機器が向けられ、日本の陽子崩壊実験施設カミオカンデIIでは超新星からのニュートリノが観測された。青色超巨星が超新星爆発を起こしたというユニークな超新星で、現在も爆発で放出されたガスや残骸が広がっており、X線衛星やハッブル宇宙望遠鏡も観測を継続している。(最新デジタル宇宙大百科より(一部抜粋)