火星は生きている!大量のメタンを検出

【2009年1月20日 NASA

火星の大気から、大量のメタンが検出された。地質的に生成されたのか生物的に生成されたのかはわからないが、メタンを発生させる活動が進む火星は、もはや死に絶えた惑星とは呼べないようだ。


(夏を迎えた火星の北半球でメタンの濃度を示した画像)

夏を迎えた火星の北半球におけるメタンの濃度を示した画像。紫色がもっとも濃度が低く、赤がもっとも濃度が濃いことを示す。クリックで拡大(提供:NASA)

NASAや大学の研究者から成るチームは、NASAの赤外線望遠鏡設備ITFとケック天文台の10m望遠鏡で数年にわたって火星を観測し、スペクトルの分析から、メタンが存在する決定的な証拠を得た。

NASAゴダード宇宙センターのMichael Mumma氏は、「火星の大気中で、メタンはさまざまな形で短い時間のうちに破壊されます。つまり、わたしたちが火星の北半球に発見した大量のメタンは、ガスを放出するなんらかのプロセスが進んでいることを示しているのです」と話している。

メタンは、4つの水素原子が1つの炭素原子と結合した分子で、地球上では天然ガスの主な成分として知られている。今回の発見に興味を示しているのは宇宙生物学者だ。地球上では、生物が食料を消化する際に多くのメタンを生成する。

Mumma氏は、火星の永久凍土の下に、暖かくて液体の水が溜まっている場所があり、そこで数十億年以上を生き延びてきた微生物が存在するかもしれないと話している。地球では地下1.5km〜3kmほどの深さにある地下水の中から微生物が発見されている。

微生物の存在に期待が高まる一方で、忘れてならないのは、地質学的な活動によってもメタンが発生する点である。たとえば酸化鉄が変成して蛇紋岩になるプロセスがあるが、それには、液体の水と二酸化炭素、さらに地熱が必要だ。しかし、現在の火星で火山活動を示す証拠は得られていない。メタンは、ずっと昔に二酸化炭素の氷の中に閉じ込められて、それが今になって放出された可能性もある。

研究チームがメタンを観測したのは、春や夏など暖かい季節に限られていた。さらに、メタンの噴出が見られた場所は、過去に氷や液体の水が流れていた証拠が得られている場所、たとえば北半球のアラビア陸地(Arabia Terra)や、ニリ溝(Nili Fossae)、さらに幅約1200kmの古火山大シルチス(Syrtis Major)の南東部と一致していた。

発見されたメタンが生物に由来するかどうかを調べるには、水素と炭素の同位元素(種類は同じだが、質量が異なる原子)の比率を測定するしかない。生物はより軽い同位元素からなる分子を利用する傾向にあるからだ。メタンの起源は、マーズ・サイエンス・ラボラトリーのような、今後行われる火星探査の実施を待つしかないようである。

Mumma氏は「現在のところ、火星のメタンが地質由来か生物由来かを判断できるじゅうぶんな情報がありません。それでも、火星は少なくとも地質学的な意味で生きている惑星と言えるでしょう」と話している。