Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2019年4月号掲載
月や星について学ぶはじめの一歩

誰でもきっと一度は「ドラえもんが自分の側にいたらいいな」と思ったり、友人と「いちばん欲しいひみつ道具は何だろう」という話題で盛り上がったことがあるだろう。『月のサイエンス』 はそんな人気キャラクターのドラえもんが、月の知識を楽しく教えてくれる「小学生向けの科学学習まんがシリーズ」。月から地球や太陽がどう見えるかなど、大人でも興味をそそられる話題がいっぱい。おなじみの登場人物たちと冒険しながら月の知識が増えていくストーリーも、安定感があり期待どおり。オリジナル描きおろし漫画80ページ以上、挿入される読み物記事40ページ近くと充実の内容で、子供の調べ学習にも使える。3月公開の映画『ドラえもんのび太の月面探査記』に登場する「月の裏側」についてもしっかり解説されている。春休みに子供と見に行こうと思っている人なら、この本で一緒に予習復習すると映画がさらに楽しめるだろう。おりしも今年7月、アポロ11号による人類初の月面着陸から50周年を迎える。半世紀の間にどれだけ月探査が進展したか、そんな話をしながら、この本を小学生に贈ると喜ばれそう。

子供にとって身近な本が漫画であるが、同じようになじみ深いものに絵本がある。『ねえねえはかせ、月のうさぎは何さいなの?』 は大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻で月の研究をしている著者が、「ネイチャー」に発表した論文を題材にした絵本。はかせが研究している「月の石の年代分析」を「月のウサギ(月面の暗黒部)の年齢」として小学4年生の女の子に解説するという、専門的でちょっとユニークな内容。2次イオン質量分析計を使って月の石のウランと鉛を数えて年齢を測るという研究現場を描くことで、月への興味だけでなく研究者がふだんどんなことをしているのかも見えてくる。どうして月に白い部分と黒い部分があるのか、それはどうやってできたのか、大人でも答えられない人が多いはず(今風にいえば「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と言われる)。5歳児が一人で読むにはちょっと難しいが、小学生なら親子で肩を並べて勉強できる。

次も、大型本の『火星を知る!』 2018年3月号で紹介した『月を知る!』 の火星版で、小学校高学年を対象にした「調べる学習百科」シリーズ。イラストや図をふんだんに使い、目で見てわかりやすい作りになっている。まず「イメージの火星」で神話や火星人などが登場し、地球人にとってどれほど火星が身近だったかを紹介。次の「火星の観察」で位置や見え方を解説し、「火星の観光」で火山や峡谷など変化に富んだ火星表面をたっぷり掲載している。最後に「火星への挑戦」でこれまでとこれからの火星探査を伝え、移住の可能性にも触れる。火星の最新情報を美しく見せてくれるビジュアル図鑑だ。

ここまで、小学生が月や星について学ぶときに役立ちそうな書籍を紹介してきたが、最後に大人も手に入れたくなる『大人の科学マガジン BEST SELECTION 01 ピンホール式プラネタリウム』 をとりあげる。この商品は2005年と2013年に発売され累計60万部を超えるベストセラーになった、家庭用プラネタリウムの復刊版。「大人の科学」は45号出ており、その中でいちばん売れたのがプラネタリウムだった。在庫がなく長い間品切れ状態だったので、「ベストセレクション」という新しいラインで復刻版を出すことにしたという。これは、過去に人気のあった付録を再販売するシリーズで、レギュラー版とは異なり雑誌記事はなく付録のみ。今回は2013年版で実現した精密な恒星原板を採用しつつ、光源は一般的な豆電球に変更したことでコストカットが可能になり価格が抑えられたという。以前買いそびれた人や、子供といっしょに作って部屋で投映させたい人など、今が入手のチャンス。贈り物にも喜ばれそうな一品。プラネタリウムを自作して自分で光らせることはまるで星を操る魔法を得たようで、ドラえもんの四次元ポケットのひみつ道具なみにワクワクする。

(紹介:原智子)