Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2015年8月号掲載
宇宙の姿にアプローチするいろいろな方法

今年は、アインシュタインが一般相対性理論を発表してから100年になる。宇宙の法則をさぐり「宇宙の始まりはどんな姿だったのか?」「いまの宇宙は何でできているのか?」そんな疑問に多くの科学者たちが取り組んできた。もしかしたらこの問題は、「人間とは何か?」「自分とは何か?」という質問と同じ意味があるのかもしれない。そんな“永遠のテーマ”ともいえる宇宙論について、いろいろな角度からアプローチしてみた。

『宇宙はどうして始まったのか』 は、そのものずばり「宇宙の始まり」について現代宇宙論の立場から迫る解説本である。といっても、物理的な数値を紹介して説明するのではなく、著者いわく「最先端の研究内容について批判的にいろいろな可能性を考えていくことで、随筆的な雰囲気をふくむ読みもの」にしている。例えば、第2章「無からの宇宙創世論」では、「無から宇宙が始まった」という考え方について考察している。「宇(空間)宙(時間)のない状態=無」という日常生活では直観的に想像しにくいことでも、数学的な方程式で導かれるなら研究者は正しいと考える。もちろん、まだ完全な解は出ていないし、この方程式の意味をめぐる見解もばらばらである。このように「宇宙の始まり」を解くキーワード(「量子論と宇宙論」「相対論と宇宙論」「素粒子論と宇宙論」)について考えていくと、やがて「『宇宙の始まり』を考えること」の意味を考えるようになる。

次の『宇宙入門』 も、宇宙を理解する手がかりとなる読みものだ。『宇宙は卵から生まれた』の改訂版で、第1章でビッグバン・インフレーション宇宙などのキーワードを「宇宙を引き寄せることば」として紹介し、第2章でエントロピーの法則・エネルギー保存則などについて「宇宙を語る文法」として解説している。タイトル通り“入門”書として、初心者でもわかりやすい言葉で書かれている。

一方、『宇宙論の物理』(上)  (下) は、理論物理を専攻する学生や、このジャンルに進出する他分野の研究者など、本格的に学びたい人を対象にした教科書。前著にあたる『現代宇宙論』が全体像を解説した本であるのに対し、今回は理論的方法を習得したい人向けだ。

『宇宙の物質はどのようにできたのか』 は、宇宙物質の起源とその進化について、物理学者や天文学者10人が語った研究書。日本物理学会が2013年に東京大学小柴ホールで行った一般向け講演会「科学セミナー」をもとに書き下ろしたものだ。編集委員によると「中学・高校の先生にも手にとっていただきたい。宇宙と物質をめぐる科学の最先端のロマンを感じていただければ幸い」とのこと。

さて、「ここまで紹介された本は難しそうで、自分は読む自信がない」という人に、超初心者向けの2冊を紹介しよう。なんといったって『マンガでわかる超ひも理論』 の表紙には、「ほかの本であきらめた人もこれなら大丈夫!」と書かれているのだ。見開きの左ページに解説文、右ページにマンガが描いてあるから、理解しにくい内容になってもとりあえずマンガだけでも読み進めていこう。とにかく「最後まで読んだ!」という体験をしてから、もう一度わからないページに戻ればいい。

『わかる!相対性理論超入門』 も表紙に「100分でわかる!」と書いてあるように、超初心者向けムック本。大判の図解やイラストがふんだんに登場するから、まずは雑誌をめくるような気軽な気持ちで手に取ってみよう。