Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2014年12月号掲載
まず「星見・月見」より始めよ

日没時刻が早くなり、夜の寒さが身にしみてくると、「いよいよ星空を楽しむ季節がやって来た!」と思う。今月は、そんな星空の世界へ導いてくれるガイドブックを紹介しよう。とくに、子どもなどの天文初心者で、今まで何となく「星空ってきれいだな」「いろんな天文現象を知りたい」と思っている人たち向きの、わかりやすくて親しみやすい本を集めた。

「星座を見つけよう」 は児童を対象にした星空観察入門書で、実際に夜空で星座を探すことを想定して書かれている。まず、星の明るさの違い(1等星から6等星について)を説明してから、明るい星を頼りに星座をたどり、そこに肉付けするように星座絵を思い描くことを紹介。次に、夜空に星が広がっているサイズ感を自分の手(げんこつなど)を使って測ることを教えて、方角を確かめることを伝えてから、ようやく星座解説に入る。しかも、子どもたちが興味を持ちそうな「自分の誕生日星座を見つける」ことから始まる。

冬になればオリオン座など子どもでも見つけやすい星座があるので、知っている星座から逆に(表紙にセットされた)星座早見盤の使い方をマスターするという手順もいいかもしれない。早見盤の使い方に慣れたところで、自分の見たい星座を探すとたどりやすいだろう。

次は“ 宙(そら)ガール”、いわゆる天文や宇宙に興味を持って行動する女性たちにぴったりの2冊。1冊目は、今月からスタートした連載「星の召すまま」の由女(ゆめ)さんによる「今夜、星を見に行こう」 。作者が、自分の大学時代の天文同好会の経験談をベースに、星の魅力をたっぷり語る天体観測コミックエッセイだ。素朴なタッチのオールカラーで、主人公がどんどん天体観測にはまっていく気持ちが伝わってくる。星ナビ読者なら「そうそう、自分もこんな天文サークル活動したなぁ」と思い出して楽しいだろうし、天文仲間を募集中の人は「いいな、自分もこんな仲間を見つけて、楽しく語り合ったり観測に出かけたりしたい」と願うだろう。とくに女性の場合は夜にひとりで暗い場所へ出かけるのは心配だから、仲間がいれば心強い。

第2章でプラネタリウムや天文台を紹介しているので、まずはここからスタートしてそこで仲間を見つける方法もある。最初はちょっと心細い“ ひとり宙ガール活動”も、行動を起こせばきっと作者のように仲間が見つかり、自分が積極的になればどんどん活動も広がる(作者は、コミックのラストで外国へのオーロラ見学・撮影に挑戦している)。天文初心者や星好き女性たちの、モチベーションを高めてくれる一冊だ。

さて、女性に限らず天文初心者にとって良き入り口となり、そして天文マニアにとっても大切な天体といったら「月」だろう。そんな月の楽しみ方や魅力をいろいろな角度から取り上げたのが「星空さんぽno.3 月を楽しむ」 だ。公式サイトによると「星を気軽に楽しみたい、星が好きな人のための星空情報誌」ということで、昨年9月に創刊し「温泉で満天の星が見たい!」 という特集をくんだり、今年4月の第2号では「夏の星空キャンプ」 について掲載している。今号のテーマである月は、山奥の温泉やキャンプ場に出かけなくても、自宅の庭や窓辺、あるいは毎日の通勤通学の途中で見ることができる天体だから、さらに初心者向きだ。といっても先ほど書いたとおりけっして侮れない天体で、たくさんの観察ポイントがあり、日本人の暮らしにも深く関わってきた。「たかが月、されど月」なのだ。

雑誌は、表紙も誌面も美しく仕上がっているから、リビングのインテリアとして飾ったり、カフェでリラックスしながらページをめくったり、なんていう宙ガールのオシャレ・アイテムとしての使い方もアリかも。大判の誌面をいかして、きれいで珍しい天体写真も多く掲載されている。月明かりによってできる夜の虹(ムーンボウ)「月虹(げっこう)」や、色も形もさまざまな「オーロラ」などの写真は、美しいことはもちろん、未知の世界への興味をかき立ててくれる。

最後は、まるで芸術作品のように精彩で目を奪われる星座絵と、その星座にまつわるギリシャ神話を紹介する「四季の星座神話」 。この本では有名なボーデ、ヘベリウス、バリットの古星図に描かれた星座絵を、同時に見比べることができる。絵画のような星座絵は、まるでプチ美術図鑑みたいに美しく魅力的だ。あらためて「むかしの人たちは、よくここまで想像を膨らませたなあ」と感心する。後半で、ギリシャ以外の国や地域に伝わる星座物語も紹介している。星はいつの時代でもどんな場所でも、見る人の心を揺さぶり想像力を刺激するものらしい。だから未来の星空(夜空)も、これ以上汚さずにいつまでも星座を楽しめるように、私たちが残していかなくてはと思う。