Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2014年9月号掲載
アインシュタインと相対性理論を学ぶ

星ナビ連載「天文学の20世紀〜近代天文学の開拓者たち〜」では毎月ひとりずつ天文学者を紹介している。8月号で取り上げたアインシュタインについての関連書籍が相次いで出版されたので、当コーナーでもそれぞれを読み比べながら、相対性理論についての理解を深めてほしい。

「アインシュタインと相対性理論」 は、彼の生い立ちから研究人生、そして亡くなった後の影響までを簡潔にまとめた伝記。難しい漢字にはフリガナが付いているので小学校高学年でも読めるし、中学生以上ならその研究内容もある程度理解できるように平易な言葉で綴られている。しかも、単なる人物紹介だけでなく、「思考実験」と題したコラムをいくつか設けて、“天才”といわれた彼がどのように発想したか追体験ができるように工夫されている。著者いわく「思考実験のほとんどはアインシュタイン本人が行ったもので、あなたとアインシュタインで知恵比べをするチャンス」とのこと。また、「ためしてみよう!」のコーナーでは、彼の理論を実証する簡単な実験を紹介している。夏休みの機会に、時間をかけてチャレンジしてみてはいかが。なお、同じ「ジュニアサイエンスシリーズ」に、「ガリレオと地動説」「ニュートンと万有引力」 がある。あわせて読むと、天文学や物理学がどのように発展してきたかを知ることができて興味深い。

「ヘリウェル 特殊相対論」 は、専門的に特殊相対論を勉強したい人向けの教科書。訳者によると、「著者ヘリウェルは、この書籍のもとになる内容を、自らが大学において『非専門家』の学生を対象として長年にわたり講義を行い、多数の学生に特殊相対論を定量的に扱えるような教育をしてきたという実績がある」と言っている。なお、この本は特殊相対論のうちの力学的な領域に限られているので、電磁気学も含めたすべてを学びたい“研究者予備軍”の人には、「シュッツ相対論入門」 を読むことをすすめている。

ところで、アインシュタインが一般相対性理論を発表したのは1915年から16年にかけて。つまり来年が「一般相対性理論誕生100年」ということになる。その節目としてイギリスの天体物理学者が著したのが「パーフェクト・セオリー」 で、一世紀のあいだ物理学に与えた影響と、それをとりまく研究者たちの壮大な伝記である。“完全なる理論”を目指す現代物理学の最先端と人間模様がいきいきと描かれている。この100年で、一般相対性理論から多くの成果が生まれた。そしてこれからの100年で、ダークマターやダーク・エネルギーの正体も解かれていくのだろう。

さて、ここまで紹介したアインシュタイン関連本は偶然にも海外で執筆されたものばかりだが、次もイギリスの物理学者が書いた教科書である。「銀河 その構造と進化」 は、その名の通り銀河に関する研究に臨むための概念について、基本から最新情報まで網羅した専門書。大学の学部上級から大学院修士課程に相当するレベルのため、大学院入学時の数学と物理の基礎知識が想定されている。とはいえ、啓蒙書レベルから専門書への橋渡し的役割も果たしてくれる良書である。銀河について詳しく学びたいと思う本誌読者なら、じっくり時間をかけて勉強すると面白いだろう。

最後は、9月号のパオナビでも紹介したイベント「宇宙博2014」を特集した雑誌「宇宙ビジュアル大図鑑」 。巻頭16ページにわたって、「NASA」「JAXA」「火星探査」「未来の宇宙開発」という見出しで展示内容を紹介。ムック版ならではの大判カラー写真や図版をふんだんに使って親しみやすく見せている。その他に、月・太陽・火星・ロケット・銀河と宇宙の構造などについて、わかりやすく解説。ライトな宇宙ファンにとっては、最新情報をざっくりと知ることができる。雑誌中程の「宇宙の博物館&観測所ガイド」コーナーは、一般公開などで施設見学に行くときの情報として参考になるだろう。また「知っておきたい宇宙の基本」コーナーでは、宇宙に関する67問をQ&A形式で簡潔にまとめている。