月刊ほんナビ 2026年5月号
📕 「宇宙の誕生と生命の夜明け」
紹介:原智子(星ナビ2026年5月号掲載)
「春はあけぼの」とはよく言ったもので、この言葉には日本の自然や暮らしが凝縮されている。日本の「春」は“命の芽生える時”であり、「あけぼの(夜明け)」は“活動の一歩目”である。今月は、宇宙の春(=誕生)とあけぼの(=活動)を探りに行こう。
まずはニュートン別冊『宇宙のはじまり 最新版』で、宇宙誕生のシナリオを把握し、全体像をつかみたい。この本では、ビッグバンやインフレーション、量子論やさまざまな宇宙論についてわかりやすく解説している。本文には振り仮名が付され、子どもや天文初心者でもイメージしやすいように図解も豊富だ。2021年刊行の同名ムックに、ユークリッド宇宙望遠鏡やサイモンズ天文台など新たな観測現場の情報を加え、最新知見を反映した改訂版。
ここからは、専門的な内容に踏み込んだ新書を3冊紹介する。『宇宙は「もつれ」でできている』は2016年に出版され、「量子論の名著歴代ベスト10」(英紙ガーディアン)に選ばれるなど、世界的に読み継がれてきた傑作。その新装改訂版が「量子力学の誕生100年」に当たる昨年、刊行された。量子力学は相対性理論と並ぶ現代物理学の根幹を成す理論だが、その道のりは平坦ではなかった。1925年にハイゼンベルクが「行列力学」を発表すると、10年後にアインシュタインらが「量子もつれ」の概念を提唱した。3人の科学者の頭文字が付いたEPR論文は、「量子力学が不完全である」ことを指摘するものだった。EPRパラドックスやベルの不等式など、量子の実在をめぐる議論を科学ジャーナリストが臨場感豊かに描く。
続く『宇宙暗黒時代の夜明け』は、ビッグバンからファーストスター(最初の星)が生まれるまでの「暗黒時代」と、そこから宇宙に光が満ちる「再電離期」に切りこむ一冊。“宇宙の夜明け”の時期や性質を直接探るカギは、中性水素から放射される「21cm線」にあるという。極めて微弱なこの電波の検出に挑む現在進行形の現場を伝える。宇宙論と天体物理学の双方が必要な“エキサイティングな研究分野の夜明け”でもある。
一方、観測史上最高クラスの極高エネルギー宇宙線「アマテラス粒子」を検出した科学者は、その起源とメカニズムの解明に挑む。『宇宙線のひみつ』では、ビッグバンを探る手がかりにもなる宇宙線についてわかりやすく紹介。「宇宙から届く謎の手紙」とも呼ばれる宇宙線が、どこで生まれ、どのように加速するのか。超新星爆発やブラックホール、さらには生命の進化ともからめて、宇宙線研究の最前線を解説する。
次は、故スティーヴン・ホーキング博士の愛弟子にして、「ホーキング最終論文」の共著者である宇宙物理学者による『宇宙・時間・生命はどのように始まったのか?』。博士が残した「そろそろ新しい本を」という遺志を継ぎ執筆した初単行本は、27か国語に刊行が決まりベストセラーに。優れた一般向け科学書に与えられる「コスモス図書賞」も受賞した。「宇宙の始まり」や「時間」は存在しない⁉「観測」が宇宙を形づくる⁉……といった大胆な視点を提示。博士の最終理論の先を見据えて、「宇宙の始まりをめぐる常識」を揺さぶる。博士がどのように理論を築いたのか、師弟の心温まるエピソードも交えながら伝える最新宇宙論。
最後は、宇宙の誕生と生命の起源に迫る大判ビジュアルブック『宇宙と生命誕生の物語』。フランスの分子生物学者と宇宙物理学者が、170点の写真やイラストを用いてわかりやすく紹介する。宇宙創成の歴史をたどりながら、「生命とは何か」を探り、最後は地球外生命について視野を広げる。宇宙における生命の位置づけを俯瞰しつつ、「宇宙」や「生命」という根源的な問いへと導いてくれる。
さて、『枕草子』の魅力は、春の次に「夏は夜」が置かれていること(ニヤリ)。人は今も昔も、“夜”に心をひかれるようだ。














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