月刊ほんナビ 2026年3月号

📕 「想像の翼を宇宙に広げる」

紹介:原智子(星ナビ2026年3月号掲載)

今月は、子ども向けの絵本と大人向けの文芸書、そして本格派SF小説を紹介する。

『うちゅう たいようけいの ごきんじょさん』(Amazon)

まずは、「マカナルティーの宇宙科学絵本」第5弾の『うちゅう』。宇宙を旅する“彗星”が語り手となり、「たいようけいの ごきんじょさん」である惑星からオールトの雲までを案内する。シンプルな文章は幼い子どもにとって理解しやすく、ユーモラスな箇所も楽しい。擬人化された天体イラストは、表情や色彩によりそれぞれの特徴が直感的に伝わる。

『こぐまのもぐ うちゅうへいく』(Amazon)

太陽系の基本を知ったら、今度は各天体へ向かうお話の『こぐまのもぐ うちゅうへいく』。迷子を探すために“もぐ”が仲間と宇宙を巡るストーリーで、行く先々の景色や体験が天体の特徴を表している。具体的な学びポイントは巻末の「おうちの方へ」にまとめられているが、まずは物語絵本の好きな子が「宇宙に興味を持ち、星の世界を想像する」だけでも充分かも。

『南天へのふしぎな冒険 ―日本とは違う星空―』(Amazon)

次は、地上から南天の星を眺める『南天へのふしぎな冒険』。これまで、「お月見」「夏の大三角」「冬の宇宙」「秋の星」「春の宇宙」をテーマにしてきた、ほっしーえいじ氏による科学絵本シリーズ。第6弾の今作では、なんと縦にページを開くのだ!日本から(地図上で)下方に位置する南半球へ移動することや、星座の並びが上下逆に見えることを、「普段のめくりとは違う」という感覚で実感できる。

『おやすみのあとで Through the NIGHT SKY』(Amazon)

世界的に知られるイギリスDK社による科学絵本『Through the Night Sky』が『おやすみのあとで』のタイトルで日本語版になった。夜間に活動する生き物や暗闇で光るモノについて、専門知識を交えつつわかりやすい言葉で教えてくれるビジュアル本だ。やわらかな語りは、まるで息を潜めて静かに動物や植物を観察するかのように、読み手を夜のひそやかな世界へ誘う。その対象はオーロラや星などの夜空に広がり、多彩な宇宙の姿を見せてくれる。それは単なる天体解説にとどまらず、天文学の歩みや人類と宇宙の関わりを多角的な視点から伝えるものだ。「おやすみ」の前に子どもと一緒に読めば、きっと夜の訪れにワクワクする。大人にとっても、アートと自然科学が絶妙に融合した魅力的な紙面に心を奪われる。

『星がすべて』(Amazon)

さて、ここからは文章中心の書籍を紹介する。『星がすべて』は、インターネット時代を象徴する詩人である最果タヒ氏の詩とエッセイ集。実在する星座だけでなく、著者が創造(想像)した架空の星座にも自由に思いを馳せているのが面白い。また、2025年秋に「コニカミノルタプラネタリウム天空」で上映した番組「詩のプラネタリウム」も収録している。

『暗黒空間』(Amazon)

『暗黒空間』は恒星間探査船と星間連合本部を舞台に、銀河規模の陰謀に迫るSF推理小説。著者の一人は「『スター・トレック』とジョン・ル・カレのスパイ小説のミックスを目指した」という。その言葉どおり、壮大な宇宙船活劇と冷徹な政治劇が絡み合い、登場人物たちの思惑が多層に重なっていく。アメリカ人作家らしく、現代社会が抱える階級間の断絶や対立への意識も垣間見える。

『神の目の小さな塵(上)』(Amazon)
『神の目の小さな塵(下)』(Amazon)

一方、『神の目の小さな塵(上・下)』は1978年に初版が世に出た古典的名作である。長らく絶版状態が続いていたがついに復刊し、手に取りやすくなった。物語は、35光年離れた恒星系から光子帆船に乗ってやってきたモート人との出会いで始まる。いわゆる「ファースト・コンタクト」ものだが、単なる異星人遭遇譚にとどまらず、しだいに壮大な宇宙叙事詩へと発展する。作家は異星文明を「敵」でも「人類の写し」でもなく、まったく異なる論理を持つ存在として描いている。モート文明には致命的な生物学的・社会的問題が内包されており、宇宙全体に破滅的な結果を招く可能性があると知った。そのとき、西暦3017年の人類はいかなる選択をするのか。発刊当時、ロバート・A・ハインラインの推薦文が添えられた同書は、圧倒的な支持を集めヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞のファイナリストになった。「異星文明との第一次接触」小説の金字塔。

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