豪雨の爪跡に降ったペルセウス座流星群

このエントリーをはてなブックマークに追加
7月に西日本の広域を襲った豪雨は各地に痛々しい傷跡を残した。日本公開天文台協会への報告によると、公共の望遠鏡そのものが被災した例はなかったが、アクセス道路の崩壊や地元地域の被災に配慮した大規模イベント等の中止が相次いだ。

【2018年10月12日 星ナビ編集部

報告:三島和久さん(倉敷科学センター)

「星ナビ」2018年10月号「News Watch」より)

7月の西日本豪雨災害で岡山県で最も被害が大きかったのは、倉敷市真備町にある真備天体観測施設(通称:たけのこ天文台)だ。この地域では河川決壊により地域一帯が広範囲に水没。被害が確認された建物は4,600棟を超えるといわれている。たけのこ天文台は、まさにこの浸水地域の中心に位置している。

天文台自体は2階建ての図書館施設の屋上にあり水没を免れているが、下層階の図書館の被害が甚だしく、水没した書籍や什器、流れ込んだ泥でひどい状況になっている。一方、敷地駐車場は地域に溢れた災害ごみの仮置き場にせざるを得ず、立ち入りも制限されている。この状況が落ち着き、天文台の運用が再開されるまでには相当な時間がかかりそうだ。周囲は泥が乾いた砂埃が舞い上がり、電気設備へのダメージで施設内は停電しており調湿機能が停止している。長期的な望遠鏡への影響も心配される。

倉敷市真備町の周辺では、天文愛好家が主体となった被災者支援の輪が広がっている。8月19日に倉敷市内で開催されたチャリティ天体観望会では、個人所有の10数台の機材が集結し、火星や土星を楽しむ350人の参加者とともに大きな盛り上がりを見せた。

チャリティ観望会
地元のアマチュア天文家が企画したチャリティ観望会。大口径の機材が数多く集まり「ほんとにこれが個人の望遠鏡?」と参加者たちからも驚きの声が上がる

筆者は8月13日のペルセウス座流星群の夜、天文台のある被災した施設に向かった。累々と積み上げられた災害ごみの山。どれだけ多くの人々が家を失い、日常を壊されたかを物語っている。これが西日本豪雨災害の現実であることも忘れないでいただきたい。被災地を照らすペルセウス座流星群の火球が出現した。現在も苦しい生活を強いられている被災者にとっての希望の光となることを願っている。

ペルセウス座流星群
被災地を照らすペルセウス座流星群(撮影地/岡山県倉敷市真備町)