地球外生命探し、スペクトル観測では困難

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【2014年4月30日 Phys.Org (1)(2)

太陽系外に生命を探し出すのは、これまで考えられていた以上に困難であるという研究成果が発表された。系外惑星に生命体が存在する証拠を検出しようとスペクトル観測が行われているが、この観測法では誤判断してしまう可能性が高いというのだ。


系外惑星「ケプラー22b」の想像図

ハビタブルゾーンに存在する系外惑星「ケプラー22b」の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/Ames/JPL-Caltech)

系外惑星の大気中にメタンや酸素などが存在する場合、生命が現存するか、または過去に存在したことを示唆する証拠ではないかと考えられている。惑星大気を通過して届く中心星の光の分析(スペクトル観測)から、これらの物質を検出する試みがなされている。

しかし、カナダ・トロント大学スカボロ校のHanno Reinさんらの研究チームによれば、衛星を持ち生命の存在しない惑星の大気観測の結果が、まるで生命が存在するかのように判断されてしまう可能性があるという。

たとえば、大気に酸素とメタンの両方が検出された場合を考えてみる。メタンと酸素は互いに反応して消えてしまうので、大気中に両方が存在し続けているということは、そのうち一方が連続的に供給されているはず。つまり、その天体の表面に存在する生命の活動で供給されている兆候だと理論的には考えられる。しかし、ある系外惑星に酸素が存在し、その「衛星」の大気中にメタンが存在すると、酸素とメタンが反応を起こすには距離がありすぎるが、地球からの観測では惑星と衛星は近すぎるため両者のスペクトルを分離できない。検出そのものは正しいが、生命体の証拠と判断するのは誤りということだ。

研究チームは、現代の技術では惑星と衛星の大気を分離できるほど精密な望遠鏡は作れないうえ、近い将来でも技術的に不可能だろうと指摘している。「非現実的といえるほど巨大な望遠鏡が必要です。口径100m級サイズのものを宇宙で建設する必要があるでしょう」(Reinさん)。

スペクトル観測によって大気成分を調べることは系外惑星の理解につながるが、地球外生命探しのうえでは技術的な限界がある。研究チームでは「知的生命体が発する電波の検出」を、地球外生命体探しの方法の1つとして挙げている。太陽系内にも、地下に水が存在する可能性が高まっている土星の衛星エンケラドスをはじめ優先すべき調査対象がある。地球外生命体探しは適切な対象を選ぶのが大切ということだ。

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