銀河中心電波源「いて座A*」のフレアからその正体に迫る

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【2014年2月17日 国立天文台VERA

日米の電波干渉計観測により、天の川銀河の中心ブラックホールのそばにある電波源「いて座A*」のフレアが、ブラックホール近辺のプラズマ流全体における現象であることがわかった。


天の川銀河の中心部といて座A*の電波画像

天の川銀河の中心部といて座A*の電波画像。クリックで拡大(提供:国立天文台)

天の川銀河中心にある、太陽の400万倍の質量を持つ超巨大ブラックホールには、明るい電波源「いて座A*」が付随している。その正体は数億〜数十億度という超高温のプラズマガスと考えられているが、ブラックホールに引き込まれつつあるガスなのか、それともブラックホール付近から噴出したガスなのかはわかっていない。

その正体を探る大きなカギが、日米の電波干渉計観測から得られた。2007年5月に起こったフレアを日本のVERAと米国のVLBAで観測し、その明るさと大きさを同時に調べることに成功したのだ。

通常は数時間から1日の時間スケールで電波の明るさが変わるいて座A*だが、この時のフレアは10日以上も持続した、例をみない種類のものだった。また、フレアの前後で構造や大きさには大きな変化がなかった。これらの観測結果は、フレアがプラズマ流内の一部の領域での現象ではなく、プラズマ流全体で生じた変化によるものだということを示唆している。

このようなプラズマ流全体で起こっている現象は、いて座A*の正体を探るだけでなく、一般的な銀河中心ブラックホールでの現象を理解するための重要な手がかりとなる。

今後の研究ではさまざまな波長の電波観測を行い、フレアが起こるしくみやブラックホール周辺のプラズマ流の構造に迫っていくという。