超巨大ブラックホールが爆発的な活動を起こす頻度は?

【2010年12月27日 Chandra X-ray Observatory

NASAのX線観測衛星チャンドラによる観測で、過去数十億年に最大級のブラックホールがどのくらい活発であったかを示す情報が得られた。この発見は、超巨大ブラックホールがどのように成長するのかを明らかにし、天の川銀河の中心に潜む巨大なブラックホールが将来どのように進化するのかについても示唆を与えるものとなった。


((左)銀河団 Abell 644(右)銀河 SDSS J1021+131の画像)

(左)銀河団 Abell 644(右)銀河 SDSS J1021+131。クリックで拡大(提供:X-ray: NASA/CXC/Northwestern Univ/D.Haggard et al, Optical: SDSS)

天の川銀河を含め、ほとんどの銀河の中心には、太陽の数百万〜数十億倍もの質量をもつ超巨大ブラックホールが存在していると考えられている。銀河の中心に存在する超巨大ブラックホールの活動によって高いエネルギーを活発に放出している天体は活動銀河核と呼ばれ、周囲からブラックホールへと落ち込むガスが熱せられることにより、X線の波長で明るく輝いている。

米・ワシントン大学およびノースウエスタン大学のDaryl Haggard氏らは、天の川銀河と同規模の銀河の中心にある巨大ブラックホールのうち、活動のピークにあるものはたったの1パーセントにすぎないことを発見した。氏は「ブラックホールの成長と周囲の環境がどのような関係にあるのかを理解するためにも、どれだけのブラックホールがたえず活動しているのかを知ることが重要なのです」と話している。

この研究はChaMPと呼ばれる、チャンドラによる多波長観測プロジェクトの一環で行われた。同プロジェクトは30平方度の視野をカバーする、チャンドラによるサーベイとしては過去最大規模のものである。チャンドラのX線画像をSDSSの可視光画像と重ね合わせ、約10万もの銀河が分析された。そのうち1600個がX線で明るく輝き、活動銀河核を擁するとみられている。

Haggard氏らの研究の結果、銀河の質量と活動銀河核を含む割合が比例するということ、そして、宇宙の始まりから時間が経過するほど活動銀河核の割合が少しずつ減少していることがわかった。こういった研究は、銀河のお隣り同士の影響についても理解を深める。散在銀河(銀河団や銀河群に属さない銀河)でも銀河団の銀河でも、活動銀河核を持つ割合に違いは見られないからだ。

研究チームの一員で米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターPaul Green氏は「近傍宇宙に散在する銀河のうち、活動的な超巨大ブラックホールが存在する銀河を直接割り出しました。わたしたちは、どれくらいの頻度で爆発的な活動を起こすのかを知りたいのです。そのプロセスこそが、ブラックホールの成長に拍車をかけるからです」と話している。

天の川銀河の中心には、「いて座A*」(いて座Aスター)の名前で知られる超巨大ブラックホールが潜んでいる。「いて座A*」の活動は、チャンドラなどが数年にわたって行った観測によって、ひじょうにレベルが低いことがわかっている。しかし、わたしたちの天の川銀河がChaMPによるサーベイで見られたような傾向をたどるとすると、「いて座A*」は太陽の数十億倍もX線で明るく、さらに時間をさかのぼると活発な活動は日常的なものであったはずと考えられている。

Haggarad氏は「ひじょうに活発に活動するブラックホールというのは、意外にも珍しい存在のようです。そのことが、周囲の環境がブラックホールの成長に与える影響を知るための重要な鍵なのでしょう」と話している。

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