土星の衛星タイタンに氷火山は存在しないか

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【2011年4月12日 NASA

土星探査機カッシーニによる衛星タイタンの表面の観測結果から、タイタンには内部の熱が十分になく、氷の火山は存在していない可能性がでてきた。存在していないとすれば、タイタンの厚い大気の形成原因は火山ではなく、表面の地形も風雨や隕石の衝突によってできたものと考えられる。


(カッシーニによるタイタンと土星の画像)

カッシーニによるタイタンと土星。広角カメラで赤、緑、青の3枚のフィルターを用いて撮影し合成。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

(雨に打たれたときのシミュレーション結果)

地表が雨に打たれたときのシミュレーション結果。左は雨による侵食を受ける前の地形を示し、右は雨による侵食を受けてクレーターが引き伸ばされた地形を示す。火山の火口のように変化していることがわかる。クリックで拡大(提供:A. Howard)

タイタンは土星の衛星の中では最も大きく、太陽系全体で見ても4番目に大きな衛星である。また衛星の中では唯一厚い大気を持ち、その大気がどうやって形成されたのかが大きな謎となっている。

タイタンの調査は1997年に打ち上げられた土星探査機カッシーニによる外からの観測のほか、カッシーニに搭載された着陸機ホイヘンスを降下させて大気組成や温度、地表面の様子などの直接探査も行われた。その結果、タイタンには97%の窒素と2%のメタンで構成された厚い大気が存在していることや、湖や雨という形でメタンが循環していることがわかった。

タイタンの表面には火山のような地形も見つかっていたため、この厚い大気は火山によって形成されたとする説もあったが、今回タイタンの中で火山で形成された可能性が高いと思われる地形を詳細に分析したところ、この地形は火山によるものではないと結論付けられた。

今回データが詳細に見直された地形の中には、これまでにも別の研究によって火山である可能性が指摘されてきたソトラ白斑(Sotra Facula)と呼ばれる、かつて1度氷の噴出があった可能性があると思われていた領域も含まれている。火山と思われていた領域も内部熱源が原因ではなく、天体衝突や風雨によるもので説明可能とされ、火山の存在を強く示すような証拠は見つからなかった。

厚い大気を現在まで保っておくためには何らかの供給源が必要で、火山はその有力な候補の1つであったが、この発表によってこれまでの説が見直されるかもしれない。

カッシーニの探査は2017年まで延長予定で、今後もタイタンの火山や大気の形成に関して成果をあげることが期待される。


カッシーニの位置と航路

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、カッシーニやメッセンジャー、「はやぶさ」など、主な探査機15機の設定日時における位置や航路を表示することができます。

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