チャンドラ、もっとも遠いX線ジェットを発見

【2003年12月7日 Chandra Photo Album

NASAのX線観測衛星チャンドラによって、これまででもっとも遠い120億光年かなたのX線ジェットが発見された。このジェットから、ビッグバンからわずか14億年後の宇宙背景放射について調べることが可能になるので、初期宇宙に関して興味深い情報を与えてくれそうだ。

(チャンドラの捉えたジェットの画像と、想像イラスト)

クエーサーGB1508+5714からのジェット(左上)と、X線源周辺のようすの想像イラスト(提供:NASA/CXC/A.Siemiginowska et al.; イラスト:CXC/M.Weiss)

チャンドラX線望遠鏡は、もともとはクエーサーと地球の間にあるダストからのX線放射についてデータを集めるため、りゅう座のクエーサーGB1508+5714を観測した。当時はGB1508+5714からはジェットや複雑な構造を示すものは何も得られていなかったが、その後一般に公開されたデータをあらためて見直したところ、クエーサーの中心にある超巨大ブラックホールから10万光年以上にわたりジェットが伸びていることが明らかになったのである。

ジェットを構成する電子が高速で動きながら宇宙背景放射の光子にぶつかると、光子のエネルギーが増幅されてX線の波長になる。これが、今回チャンドラが発見したようなX線源となるのだ。X線のエネルギーは電子や背景放射の光子の強度に依存するので、そこから背景放射について調べることが可能になる。

今回のジェットの発見で興味深いのは、ビッグバンからわずか14億年後の宇宙背景放射について調べることが可能になったということだ。過去に発見されたもっとも遠いX線ジェットはビッグバンの30億年後に相当するものであったが、さらにさかのぼって背景放射を調べることができるようになったということになる。これは、背景放射の強度が時間とともにどのように変化していったのかを調べることにもつながる。今後の研究成果の発展が楽しみだ。