ブラックホールから放射されるX線ジェットの一生

【2002年10月10日 Chandra Photo Album

NASAのチャンドラX線観測衛星とオーストラリアの電波望遠鏡によって、ブラックホールから放射されるX線ジェットの一生が初めて観測された。

(X線ジェットが離れていくようすを写した画像とX線連星の想像イラスト)

(左)X線ジェットの画像。中央がX線源で、両側にあるジェットが離れていっている、(右)X線連星系の想像イラスト(提供:左:NASA / CXC、右:CXC / M. Weiss))

観測された天体はじょうぎ座のX線源 XTE J1550-564という連星系の天体で、地球から約1万7千光年離れている。この天体は1998年にアウトバースト(突発的な増光)を起こしたところをNASAのロッシX線衛星によって観測された。この天体から放射されている高エネルギーのジェットは東西2方向に見られる。初めのうちはジェットは光速の半分ほどの速さで動いていたが、4年経った現在は減速している。2つのジェットの間は3光年ほど離れており、東側(図の左半分の画像の左側)のジェットは消えかかっている。

恒星質量のブラックホールや銀河の中心にある超巨大ブラックホールからのジェット放射は宇宙のいろいろなところで起こっていると考えられている。今回のような観測や研究を続けることでその仕組みを知るてがかりが得られるであろう。特に今回の場合はジェット放射の最初から消えるまでを継続して観測できたという点で重要である。また、ジェットが星間ガスの間を動くと抵抗を受けて減速し規模が小さくなっていくと考えられているが、今回の観測では初めてそれが実際に確かめられた。

なお、リリース元のサイトでは、ジェットが離れていくようすを動画で見ることができる。

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