火星到着5年目を迎えた双子の探査車

【2009年1月6日 NASA

5年前の1月4日(日本時間、以下同)、NASAの無人火星探査車スピリットが火星に降り立った。続く1月25日には、同型の探査車オポチュニティーが着陸した。その後の探査がこんなにも長期間にわたるとは誰が想像しただろう。両探査車は、今も次の目的地を目指し、走行中だ。


(オポチュニティーが撮影した画像)

エンデバー・クレーターへ向かうオポチュニティーが2008年10月に撮影した画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

NASAのジェット推進研究所では、数百人のエンジニアや研究者が、スピリットが火星で5年目を迎えたことを喜びあった。3週間遅れで火星に着陸したオポチュニティーも、まもなく5年目に入る。

両探査機がこれまでに撮影した画像は約25万枚、NASAの火星周回機マーズ・オデッセイを介して送信してきたデータは36ギガバイト以上にのぼる。走行を邪魔する砂だまりや機器の劣化に悩まされつつも、砂嵐に耐えて、山を登り、クレーターに下降するなど、これまでに走行した距離は21kmを超えた。

太陽電池パネルに積もる砂ぼこりも厄介だ。その砂ぼこりを強い風がたびたび吹き飛ばしたことは、探査車にとって思いがけない助けとなった。しかし、絶対的に頼れる助けではない。スピリットの場合は18か月以上風が吹いていない。火星の南半球で過ごす3回目の冬は、ただでさえ太陽光が少なく、活動終了のピンチであった。

その冬も2008年12月に終わり、春から夏にかけてスピリットの電力は回復しそうだ。運用チームは、スピリットを現在の位置から183mほど南へ向かわせようとしている。そこには小さな丘と、「ゴダード」と呼ばれる家ほどの大きさの穴がある。どちらも、火山活動で形成された可能性があるという。

一方、オポチュニティーは過去2年間調査を続けていたビクトリア・クレーターを4か月前に抜け出して、次なる目標である直径22kmのエンデバー・クレーターを目指している。ビクトリアからエンデバーまでは12kmで、さまざまな障害物をよけて進まなければならないことを考えると、長旅になりそうだ。だが、2006年から火星を周回しているNASAの火星探査機マーズ・リコナサンス・オービターのおかげで、砂だまりを避けつつ適切なルートを進むことができる。

探査車の科学機器主任研究員であるコーネル大学のSteve Squyres氏はこう語る。「科学的関心から始まったこの旅も、今やもっと重要なことへとつながっています。ミッションは今や、人類がほかの惑星で初めて行う実地調査になったのです。数十年後に火星探査の歴史を振り返るとき、スピリットとオポチュニティーはもっとも重要だったと見なされることでしょう。科学的成果によってではなく、われわれが初めて火星の表面を本当の意味で探検したという点で」