火星探査車オポチュニティー、クレーターへの「第一歩」

【2007年9月15日 NASA JPL

NASAの無人火星探査車「オポチュニティー」が、ビクトリア・クレーターに入り込んだ。この探査が計画されたのは6月のことだった。その後、活動継続自体が危ぶまれるほどの砂嵐に襲われていたが、驚異の耐久力を見せるオポチュニティーの探査は続く。


(ビクトリア・クレーターの斜面)

オポチュニティーの前方に搭載されたカメラからの画像。ビクトリア・クレーターの斜面が広がる。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

ビクトリアは直径約800メートルのクレーターで、古い年代の地表が露出している。オポチュニティーは1年ほど前からビクトリアの縁を走行していて、6月末には「ダック・ベイ」と呼ばれるゆるやかな斜面に到達していた。ここからクレーターの中に入れば、大昔の火星における水の証拠が得られるかもしれないが、二度と戻ってこられないリスクもある。

難しい判断だったが、運用チームはゴーサインを出した。理由の1つは、科学的成果の期待値がそれだけ高いこと。別の理由は、探査車が90日という設計寿命より12倍以上も長持ちし、「ここまで来れば悔いはない」という思いだった。

しかし、その直後に大規模な砂嵐が発生し、クレーターへの進入どころではなくなった。空が砂におおわれて太陽電池に日光が届かない中、運用チームは探査車の活動を最低限に抑えて嵐をしのいだ。活動継続に対して悲観的な見方もあった中、探査車は嵐が過ぎ去るまで耐えきった。嵐が収まると、今度は砂が太陽電池パネルに積もるという問題が発生したが、風が吹き飛ばしてくれるという幸運に恵まれた。

2か月以上遅れたが、ビクトリアの探査が始まった。9月11日、オポチュニティーはクレーター内部に初めて入り込んだ。車輪がスリップしないか慎重に確かめながら、約4メートル進んで約3メートル戻り、初日の走行は終了。(火星から見て)翌日は、斜面を6メートル下った。

クレーターへの進入が慎重なのは、帰り道を確保するためだ。運用チームに、探査がこのクレーターで終わるという考えはほとんどないだろう。

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