火星の日の出を見たフェニックス、より深い土壌を調べる

【2008年9月1日 University of Arizona(1)(2)

NASAの火星探査機フェニックスが、火星の夏の終わりを告げる「火星の日の出」を撮影した。予定期間を延長して探査を続けるフェニックスは、これまでの3倍深く土壌を掘って新たな物質を検出しようとしている。


(フェニックスがとらえた火星の日の出)

火星の日の出。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University )

(フェニックスが掘った「ストーン・スープ」と名づけられた採取用の溝)

「ストーン・スープ」と名づけられた採取用の溝。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University)

(フェニックス周辺に見られる多角形模様の画像)

フェニックス周辺に見られる多角形模様。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/U of Arizona)

フェニックスが活動している火星の北極圏では、真夏に太陽が沈むことはない。夏が終盤に入ったことを告げるように、フェニックスが86火星日を迎えた日、太陽は沈み、その75分後に昇ってきた。フェニックスがとらえた画像には、大気中のちりの粒子や氷の結晶が昇ってきた太陽の光を散乱しているようすが見られる。

奇しくもこの日は、当初の予定では、フェニックスが探査を終了する日に当たっていた。もちろん、フェニックスの探査は先月7日のニュース「フェニックス、土壌サンプルを熱して水蒸気を確認」でもお伝えしたように、9月いっぱい続行されることがすでに決定している。

そのフェニックスが次に分析を行うサンプルは、今までの3倍も深い土壌から採取される。そのため、新たな物質が検出されるのではないかと期待されている。

サンプルが採取されるのは、「ストーン・スープ」と名づけられた採取用に掘られた溝。フェニックスの周辺の地表には盛り上がった多角形模様が広がっているが、「ストーン・スープ」は、その模様と模様との間にあたる。そのため、物質が蓄積していることが考えられる。また、長い時間経過とともに、物質がへこんだ場所で沈んだり盛り上がっている中心部分に上昇したりして循環していたかもしれないと考えられている。

以前フェニックスは多角形の中心部分を掘ったが、その時は深さ5cmのところで硬い氷の混じった層にぶつかり、それ以上掘り進めることはできなかった。一方、「ストーン・スープ」を掘った際には、硬い層にぶつかることはなく、深さ18cmまで掘ることができたのだ。

「ストーン・スープ」で、豊富な塩分が検出されるかどうかも注目される。塩分は湿った場所に濃縮されて蓄積することから、この領域に液体の水が存在したのかどうかを明らかにすることにつながるからだ。「ストーン・スープ」とともに最後までサンプル採取の候補地に残っていた「アッパー・カップボード」と名づけられた採取用の溝では、白いものが発見されたが、その分析では豊富な塩分の存在は確認されなかった。

これら両採取地点の分析結果から、フェニックス周辺における塩分の分布を知る手がかりが得られるかもしれない。