火星の土壌中に猛毒の過塩素酸塩を発見か

【2008年8月7日 JPL

火星の土壌の分析が続いているが、高濃度の過塩素酸塩が含まれている可能性があるという想定外の発見があった。過塩素酸塩は毒性が強い物質だが、火星生命との関連性は現時点では何とも言えない。天然の物質を検出したのなのかどうかも含め、詳しい分析が待たれる。


(採取跡「スノーホワイト」)

「スノーホワイト」と称される土壌サンプル採取跡。MECAには6月25日と7月6日にサンプルが運び込まれた。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University)

NASAは8月4日、火星探査機フェニックスで分析中の火星の土壌サンプル中に、高濃度の過塩素酸塩が含まれる可能性があると発表した。

過塩素酸を検出したのは、少量の土壌を水に溶いて伝導率や酸化還元電位、イオン等を分析する湿式化学実験を行うMECAと呼ばれる装置で、想定外の発見だった。過塩素酸塩が含まれていたことはほぼ確実とみられるが、発見がいち早く報じられた段階であり、詳細はさらなる分析を待つ必要がある。

過塩素酸塩はひじょうに毒性の高い物質であり、これがもし火星の土壌中に普遍的に存在しているものであるとすれば、火星の地表には生命にとって有害な物質が満ちているということになるだろう。しかしながら過塩素酸塩の分布については、現時点ではまだ何とも言えない。また、過塩素酸塩を利用する微生物の存在は、可能性としてあり得る。現に地球上では南米のアタカマ砂漠に過塩素酸塩をエネルギー源として利用する微生物がいる。いずれにせよ、過塩素酸塩の存在だけでは、火星の生命の有無について何ら確証を得ることはできない。

過塩素酸塩は天然に存在するが、強力な酸化剤として人工的に合成され、ロケット燃料や爆薬などにも広く利用されている物質だ。NASAでは今後、過塩素酸塩が地球から持ち込まれたものなのかどうかも含め、詳しく検討するという。