126億光年先からの光を観測、ぐんま天文台など

【2006年10月16日 ぐんま天文台

ぐんま天文台などの望遠鏡が、126億光年先で発生したガンマ線バースト(GRB)の残光をとらえることに成功した。国内の望遠鏡としては、これまでで最遠の観測例であるとみられる。


(GRB060927 の可視光残光)

ぐんま天文台の150センチメートル望遠鏡がとらえた126億光年離れたところで発生したGRB060927の可視光残光(提供:ぐんま天文台 ニュースリリースページ)

今では宇宙最大級の爆発現象として研究が進みつつあるガンマ線バーストGRB)も、かつては正体不明の現象だった。解明のきっかけとなったのは、ガンマ線の放射が終わった後に見られる「残光現象」と呼ばれるX線や可視光の輝きだ。残光現象を調べることで、GRBが遠方の銀河で起きている現象で、巨大質量星の最期における大爆発や、中性子星またはブラックホールどうしの衝突であることがわかってきた。しかし、GRBのすべてが明らかになっているわけではない。残光現象が観測できないGRBがあるほか、残光の持続時間も1日以内と短いからだ。

数十億年も離れた銀河の観測といえば、ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡のような大型装置の独擅場と思われがちだ。しかし、GRBの残光現象を追うために重要なのは、何よりGRBの報告を受けてすぐに望遠鏡を向ける、迅速な観測体制だ。これまでも、国内の天文台、研究機関、さらにはアマチュア観測家の望遠鏡が、GRB残光の観測で活躍を見せている。そしてこのたび、国内の複数の望遠鏡が記録的な快挙を成し遂げた。

9月27日午後11時7分35秒(日本標準時)に、NASAGRB観測衛星スウィフトがGRB060927を発見した。発見情報は十数秒後に世界中の観測施設にインターネット経由で知らされた。当時日本は夜、しかも晴天に恵まれていたため、残光を観測するには絶好の条件だった。群馬県吾妻郡高山村のぐんま天文台では口径150センチメートルの望遠鏡が稼働中だったが、報告を受けて観測を中断しGRB060927の方に向けられた。その結果、GRB発生から37分後に観測を開始し、約20等の残光をとらえることに成功したのである。

このほか、大阪大学の35センチメートル自動望遠鏡が発生1分後に16等程度の、東京大学木曽観測所の105センチメートル望遠鏡が約20分後に19等程度の残光を、それぞれ観測している。

半日後にヨーロッパ南天天文台の8メートル望遠鏡VLTが残光の分光観測を行った結果、GRB060927が発生した場所は126億光年もの距離にあることが明らかになった。現在推定されている宇宙年齢に基づけば、宇宙誕生からわずか10億年で発生したGRBということになる。また、126億光年という距離はGRBとしては128億光年の記録に次ぐ2番目の遠さだ。そして、国内の望遠鏡がとらえた光としては、これまででもっとも遠くにある天体が発したものではないかと考えられている。

ガンマ線バーストって何?

ガンマ線はX線よりさらに波長の短い電磁波だ。ガンマ線バーストとは、宇宙のある1点から突然、強力なガンマ線がひじょうに短い時間だけ飛来してくる現象。ガンマ線バーストには、性格の違う2種類のものがある。「ロング・バースト」と呼ばれるものは、ガンマ線の放射が2秒から数分程度。この正体は、極超新星爆発だと考えられるようになったきた。また、「ショート・バースト」の放出時間は、数ミリ秒から2秒程度。中性子星やブラックホールの合体という説が有力だ。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.93 ガンマ線バーストって何?より一部抜粋)

<参照>

<関連リンク>

<関連ニュース>