NASAのスイフト衛星、0.03秒のガンマ線バーストを検出

【2005年5月20日 国立天文台 アストロ・トピックス(103)

5月9日(月)、NASAが打ち上げたスイフト衛星は、非常に爆発時間が短いγ(ガンマ)線バーストをとらえることにはじめて成功しました。バーストの時間は0.03秒(編集注)。GRB 050509Bと名付けられました。これまでなぞに包まれていた短時間のガンマ線バーストが起こるメカニズムを明らかにできるのではないかと期待されています。

ガンマ線バーストは宇宙で最も激しい爆発現象です。爆発している時間の長さによって、二つのタイプに分けられています。よく観測されるのは、2秒以上続く長いバーストです。大質量星が爆発するときに起こる現象だと考えられています。このようなガンマ線バーストは生まれたての星が多い遠方の若い銀河で起こる傾向があることが知られています。一方、バーストの時間が短いものは、中性子星やブラックホールの衝突によって起こるのではないかと考えられています。しかし、バーストの時間がきわめて短いため、正確に位置が速報された例が少なく、アフターグロー(残光)は観測されたことがありませんでした。

アフターグローとは、短時間のガンマ線バーストのあとに残ってみえるX線や可視光の放射のことです。バースト直後は急速に減衰しますが、数日から数週間にわたって続きます。バーストの起源を明らかにした決め手はアフターグローの観測でした。

スイフト衛星は、2004年の11月、ガンマ線バーストを監視観測するためににNASAが打ち上げた衛星です。バースト後のアフターグローを観測するために、ガンマ線バーストを検出したらすぐに、衛星全体を回して、衛星の望遠鏡をその方向に向ける機能をもっています。

スイフト衛星に搭載されたX線望遠鏡は弱いアフターグローを検出しましたが、5分後には消えてしまいました。紫外線・光学望遠鏡ではアフターグローを検出することはできませんでした。この結果はブラックホールや中性子星の衝突では長くつづくアフターグローは出ないという理論的な予想に合っているようです。

ガンマ線バーストの知らせを受けたハワイにある口径10メートルのケック望遠鏡は、予定されていた観測を中断し GRB 050509Bの観測に切り替えました。二台の望遠鏡のうち、片方の望遠鏡では撮像観測を、もう片方の望遠鏡では分光観測を行いました。

日本の「すばる」望遠鏡も実行中の観測を一時中断して GRB 050509Bの観測を行い、可視光でアフターグローが見えないことを確認しました。世界中の他の望遠鏡でも観測が行われ、さらに詳しい解析が進んでいます。

興味深いことに、今回のガンマ線バーストの位置には、現在星形成を行っていない、古い星で構成される楕円銀河がありました。もし本当にこの銀河でガンマ線バーストが起こったとすると、その位置は、銀河の中心から約10万光年の位置と推定されています。この距離は私たちの銀河系の直径に相当します。この楕円銀河には若い大質量星がないことから、短いガンマ線バーストは大質量星の爆発が原因ではないということになります。これは、中性子星やブラックホールの衝突が原因だという説を裏付けています。

ガンマ線バーストの専門家である東京工業大学の河合誠之(かわいのぶゆき)教授は「このような短いバーストから、短時間とはいえX線アフターグローが検出されたことは大発見だ。今回の観測だけでは決定的とは言えないが、X線アフターグローからはバースト本体よりもけた違いに正確な位置が決まるので、今後、2例目、3例目も古い星からなる銀河と位置が一致すれば、長いバーストとはまったく異なる起源をもつことが確実になり、非常に興味深い。」と述べています。


アストロアーツ編集注:先日の記事ではこのガンマ線バーストの持続時間を「50ミリ秒(0.05秒)」と記述しており、今回の記事の「0.03秒」とは異なります。この違いは得られた信号の変化のうち、どこからどこまでをガンマ線バーストの持続時間と見なすかによるものです。重要なのは、秒の単位よりはるかに短い現象を、高い時間分解能で捉えたという点です。

なお、スイフト衛星が観測したガンマ線バーストの元データはSwift Trigger Information(http://gcn.gsfc.nasa.gov/swift_grbs.html)で見ることができますので、ご参照ください。