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木星とガリレオ衛星(2014年冬〜春)

「夜半の明星」とも呼ばれる木星が、2014年の冬から春の夜空を彩ります。どんな星座の星よりも明るく目立ち、さらに天体望遠鏡があれば表面の模様や4つのガリレオ衛星を観察できる、見どころの多い惑星です。

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夜半の明星の存在感

木星のおおまかな位置

2014年2月1日午後9時の星空と木星の位置(東京)。南が正面で、画面上部が天頂にあたる。クリックで拡大(ステラナビゲータで作成)

太陽と月の次に明るい天体は金星ですが、「宵の明星」または「明けの明星」と言われるように、日没後か日の出前の限られた時間帯に、比較的低い空でしか見ることができません。木星は明るさランキングではその金星に次ぐ存在ですが(大接近時の火星を除いて)、見ごろをむかえると真夜中でも空高く上っているので「夜半の明星」という呼び名もあります。

木星は太陽のまわりを約12年で1周します。地球はずっと内側を回っているので、私たちから見ても木星は12年かけて星々の中を一周しているように見えます。2013年の前半、木星は黄道十二星座の一つ「おうし座」の方向にありましたが、この冬から2014年の春にかけてはとなりの「ふたご座」に位置しています。1等星だらけの冬の星座の中でもひときわ明るいので、見つけるのは簡単です。黄色みがかかっていて、比較的またたきが少ないのも特徴です。

今回は2014年1月6日に木星が「衝」(太陽〜地球〜木星が一直線に並ぶ状態)を迎えます。このころは地球から木星を一晩中観察できるとともに、木星までの距離がもっとも近くなります。ただ、この距離が極端に変化することはないので、衝の前後数ヶ月でも明るさや天体望遠鏡での見え方は大きく変わりません。むしろ衝を過ぎてからの方が、日の入り後に高いところで見えるので観望しやすくなります。

木星が真南の空に上る時刻(南中時刻)を挟む約6時間のうちは、高度が30度を超えているので観測に向いています。南中時刻は2014年1月1日は午前0時ごろ、2月1日は午後9時半ごろ、3月1日には午後7時半ごろとなります(地域によって多少前後します)。

1年間の木星の動き

2013年8月から1年間の木星の動き。クリックで拡大(ステラナビゲータで作成)

なお、12年かけて星座の間を西から東へ移動する木星ですが、衝の前後は東から西へ移動しています。これは「逆行」といって、私たちのいる地球が外側を回る木星を追い抜くために見られる現象です。地球が木星を追い抜く瞬間が衝となります。

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モバイルアプリで探す

iステラの天体情報で木星を調べる

「帰宅する時間には木星はどのあたりに見えるのかな」「木星のそばにある星はなんだろう?」そんなときは天体ナビゲーションアプリが便利です。

iPhone用「iステラ」など各モバイルアプリでは、端末に搭載された電子コンパスやGPSと連動して、実際の空で見える星や星座について調べたり、見たい天体を探したりすることができます。

iステラで木星を導入

木星を探すときも、このとおり(左画像クリックで拡大)。検索画面で木星を選び、矢印にしたがって端末を動かせば、実際の空で木星が見える方向にたどりつきます。

「iステラ」を使って星空を楽しもう

スマートフォンを向けた方向の星図を表示するスマートフォンアプリを使って、気軽に星空ウォッチング。

モバイルツールを活用すれば、木星の位置やその周りに見える星座、星の名前などが簡単にわかります。

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望遠鏡で楽しめる衛星や模様

私たちの地球のまわりを回る天体は、人工衛星を除けば月しかありません。しかし木星のまわりには60を超える衛星があり、そのうち4つはとても大きくて地球から望遠鏡で簡単に観察することができます。この4つの衛星は今から約400年前に天体望遠鏡を木星に向けたイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが発見したことから、ガリレオ衛星と呼ばれています。

木星とガリレオ衛星

衛星の名前は内側から順番にイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストです。双眼鏡や小型望遠鏡でも楽に見つかり、時間をおいて見るとどんどん動くのがわかります。月刊星ナビの「月と惑星の動き」コーナーでは、ガリレオ衛星の位置を示すカレンダーが毎月掲載されているので参考にしましょう。

一方、条件がよければ木星本体の模様も見ることができます。木星は主にガスでできていて、地球のように海や大陸が見えることはありません。しかし木星はおよそ10時間で1周という高速で自転していて、その回転方向に沿って何本もの縞模様があります。もっとも目立つ縞は、口径5cmの天体望遠鏡でも確認できるでしょう。

口径8cm程度の天体望遠鏡なら、さらに細かな模様が本格的に楽しめるようになります。見える縞の数は4、5本で、条件に恵まれれば「大赤斑」も確認できるかもしれません。大赤斑は木星の台風のような存在で、大きさは地球2つ分、発見以来300年間消えていないと言われています。

木星本体の模様以外にも、ガリレオ衛星が太陽の光を遮って木星に影を作るのが見えることもあります。また2014年8月から2015年8月にかけては、「ガリレオ衛星の相互食」が何度か見られます。これは、ある衛星が別の衛星に当たる光を遮ったり、地球から見て衛星同士が重なったりする現象です。もう少し先のことではありますが、相互食のシーズンは6年に一度しかやってこないので今のうちから注目しておきましょう。

望遠鏡による観察は天気からの影響を大きく受けます。冬は大気がゆらぎがちで、特に風が強いと波立った水面の底をのぞくかのように模様が見づらくなります。一方、春は空がかすみがちです。こうした大気の影響は、地平線に近いところほど大きいので、なるべく木星が高く上っている時間を狙いましょう。

木星についてもっと知りたい人は、知的好奇心を刺激する天文ムックがオススメです。

手元で木星を観察したい人に、立体ジグソーパズルもありますよ。

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ステラナビゲータ9
で木星とガリレオ衛星を再現する

木星そのものを見分けるのは簡単でも、4つのガリレオ衛星を区別するのは困難です。しかもそれぞれの衛星は意外と速く動いているので、決まった時刻のそれぞれの位置を知るには天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」を使うのがおすすめです。

ここでは2014年2月1日午後7時に東京で見える木星を例に、操作の一例をご紹介します。望遠鏡で観測する前に、このように下調べしておけば、どのガリレオ衛星がどこに見えているか、さらには木星の大赤斑が表側に現れているかどうかなどを知ることができます。

木星にズームイン

検索バー

まずは木星を視野の中心に入れます。検索バーに「木星」と入力して虫眼鏡のアイコンをクリックすると木星がすぐに視野の中心に入り、そのまま拡大しても木星が画面外に逃げません。

木星のまわりにはいくつかの星が見えています。それぞれの名前は何でしょうか? ここでリボンバーの「惑星・衛星」を選択して、[衛星]の[名前]をクリックします。

リボンバーから[惑星・衛星]ダイアログを表示

衛星名を表示していない状態(左)と表示した状態(右)

衛星の右にそれぞれの名前が表示されるようになりましたが、名前がついていない星が1つあります。これはたまたま木星の近くにある恒星なのです。また、「アマルテア」という衛星が木星のすぐそばに存在することもわかりました。これはガリレオ衛星よりずっと後になって発見された衛星で、普通の望遠鏡では見つけられないほど暗い天体です。

アマルテアを非表示

衛星は個別に表示の設定を切り替えることができます。先程と同じリボンバーで[衛星]の[詳細]をクリックすると[衛星]ダイアログが表示されるので、ここでアマルテアの[表示]をオフにします([名前]だけをオフにしてもかまいません)。[OK]を押すとアマルテアという文字が表示されなくなります。

より見やすい表示形式に変更

天体情報パレット

さて、木星を大きく拡大していた場合は、日周運動によって木星がどんどん動いてしまいます。そこで木星が常に視野の中心にいるように視野を固定しましょう。木星を左クリックすると左の図のように「天体情報パレット」が表示されるので、[中央固定]ボタンをクリックします。これとは別に、右クリックで表示されるマウスメニューから[中央固定]を選択するという方法もあります。

表示形式の切り替え

ステラナビゲータの初期状態では、星図は地平線が下の「地平座標」で表示されます。経緯台式架台に載せた望遠鏡や双眼鏡の見え方を再現するならこのままでも構いませんが、赤道儀式架台で観測する場合は「赤道座標」モードに切り替えましょう。設定バーの[表示形式]をクリックして[赤道座標]を選ぶとすぐに星図の傾きが変わります。

赤道座標と黄道座標

惑星のシミュレーションでは、この他に「黄道座標」という表示形式も便利です。この形式では太陽の通り道である黄道が画面に水平になるので、黄道に対してほぼ平行に公転・自転している木星も水平になり、ガリレオ衛星の軌道の傾きが見やすくなります。なお、現在の木星は赤道と黄道が平行になっているところに位置しているため、赤道座標と黄道座標ではあまり目立つ差が現れません。

視野を180度回転

望遠鏡をのぞいているときは視野が反転・回転していることに注意が必要です。通常の望遠鏡であれば天体の像は180度回転していて、天頂プリズムを使っている場合は左右が反転します。設定バーの[視野回転]から適切な見え方を選択して、望遠鏡での見え方を忠実に再現しましょう。

時間を進めると…

ステラパッドで時間を進める

時間経過による変化

ステラパッドに表示されている日時を左クリックすると数字が1つ増えて、右クリックすると1つ減ります。たとえば時刻が18時だったとすると、「8」の部分を左クリックすれば19時になり、その状態で右クリックすれば18時に戻ります(「1」の部分をクリックすると10時間単位で変わります)。

1時間ずつ時間を進めてみると、衛星が意外に大きく移動することがわかります。ガリレオ衛星の中で最も内側を回るイオはわずか2日弱で木星を1周します。また、木星の表面を注意深く見ていると、衛星が木星と重なったり、衛星が太陽光を遮って影ができていることもわかります。もちろん、衛星同士が重なる相互食も再現できます。

木星とガニメデのズームアップ

ステラナビゲータで表示される惑星の表面には、探査機などが撮影した画像を元にしたリアルな模様が表示され、現実の回転に合わせて変化します。ガス惑星である木星の模様は少しずつ変化していくため完璧な再現は不可能ですが、最大の特徴である大赤斑の位置は観測データに基づいてシミュレートされています(160年前から現在までの範囲で)。

実は、惑星だけでなく衛星の模様も再現されています。通常の表示モードでは確認しづらいのですが、フライトモードなどを使って大きく拡大してみるとよくわかります。