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2006年11月9日 水星の日面通過

11月9日の朝、黒い水星が太陽の前を横切る「水星の日面通過」が見られました。前回水星の日面通過が見られたのは3年半前のことですが、逆に次回国内で見られるのは26年後(今回よりも好条件なのは46年後)になってしまいます。このチャンスを逃さずに観測しましょう!

水星の見かけの大きさは太陽の200分の1ほどしかないので、望遠鏡や双眼鏡を使って観察することになります。日面通過の観測は太陽の観測と同じことです。正しい方法で見なければ失明や火災につながるおそれもあります。安全な観察方法」などを参考に、安全に観察しましょう。


当日日本国内はおおむね晴天に恵まれ、各地で観測に成功したようです。そのときのようすについては投稿画像ギャラリー関連ニュースをご覧ください。

見え方

太陽面と、金星の30分ごとの位置を表した図。北が上。 右の図は、太陽面上を水星が横切っていくときの大まかな位置を示したものです。日本から見たとき、日面通過は太陽が地平線の下にあるころから始まっています。そのため、観測をはじめるのは日の出を迎え、なおかつ水星が地平線上に出たとき(水星の出)からとなります。視直径32分角以上の太陽に対して、水星の視直径は10秒角(約194分の1)と小さいので、肉眼ではなく双眼鏡や望遠鏡が必要になります。安全な観察方法を読んで十分な知識と観測機材を用意して臨んでください。

日面通過のクライマックスとなるのが、水星が太陽面の縁に達したとき(第3接触)と完全に太陽面から離れるとき(第4接触)で、午前9時10分前後です。この時点でも太陽は低い(地平高度30度以下)位置にあるので、日面通過は東から南にかけての空がじゅうぶん開けたところで観測しましょう。場所選びに迷ったときは、初日の出の観望スポットが参考になります(ただし、11月上旬の日の出の位置は、初日の出に比べるとやや北寄りです)。

ところで、水星や金星の日面通過では、かつて「ブラックドロップ」と呼ばれる現象が注目されていました。これは、水星や金星が太陽面に重なりきったとき(第2接触)やその逆(第3接触)のときに、太陽の縁と黒い惑星像がつながって見える現象のことです。しかし、2004年6月の金星の日面通過では「ブラックドロップ」がほとんど観測されず、大気のゆらぎや望遠鏡などの「ピンボケ」が原因だと判明しました。水星の日面通過を観測する際は、機材のピント合わせを正確に。

各地における太陽の高度

札幌、東京、福岡、那覇における太陽の位置を示しますので参考にしてください。クリックで拡大します。

札幌での太陽の高さを表した図 東京での太陽の高さを表した図 福岡での太陽の高さを表した図 那覇での太陽の高さを表した図

タイムテーブル

各地の現象の時刻は以下のとおりです(データ提供:国立天文台 相馬充氏)。

地名水星の出第3接触第4接触
札幌 6時19分19秒9時08分34秒9時10分26秒
仙台 6時10分05秒9時08分35秒9時10分28秒
東京 6時10分59秒9時08分37秒9時10分29秒
京都 6時23分35秒9時08分39秒9時10分32秒
福岡 6時44分41秒9時08分42秒9時10分35秒
那覇 6時42分01秒9時08分46秒9時10分38秒

安全な観察方法

日面通過を観察するときは、次の点に十分注意してください。

  • 日の出直後でも太陽を直接見てはいけません。ぱっと見ただけではまぶしくないように見えるかもしれませんが、それでも太陽光は強いので、望遠鏡や双眼鏡で見るのはもちろん、肉眼で見つめるのも目によくありません。
  • 減光用フィルターも正しいものだけを。黒い下敷き、サングラス、カラーフィルムの黒い切れ端は使ってはいけません。目に見える光はほとんど通さなくても、目に悪い影響を与える赤外線を透過してしまうからです。
    かつて使われていた太陽観察用のサングラスやフィルターにも、赤外線を通してしまったり割れる危険性があるものがあります。とりわけ望遠鏡用の減光フィルターは、こうした理由から現在ほとんど市販されていません。

以上を踏まえた上で、おすすめできる観察方法は次の3つです。

  1. 太陽観察専用の双眼鏡・望遠鏡を使用する。フィルターと一体になって特定の波長しか通さない機材の他に、ユニークな組み立て式太陽投影装置もあります。
  2. 望遠鏡の接眼部の後ろに太陽投影板を取り付ける。直接太陽を見ないので安全ですが、望遠鏡の口径が大きすぎたり、プラスチックなど熱に弱い素材が使われていると発火のおそれがあります。太陽観測を想定した設計であるか確認した上で、対物レンズの光景は4〜5cm程度まで絞りましょう。また、ファインダーの対物側には必ずキャップをつけてください。
  3. 金属蒸着シートを使う。望遠鏡の対物レンズの前に取り付けるタイプのものが販売されています。ただし、取り付ける際にはすき間や穴が空かないように十分注意してください。また、写真撮影用のフィルターで眼視観測してはいけません。